独立コーチか、会社員コーチか

悩んでいる人

「カオスを超えて、本質へ」をパーパスに掲げるウエイクアップの平田淳二です。

先日、ある方とお話ししていて、こんな話題になりました。
「コーチとして独立するか、会社員としてコーチングを続けるか」

振り返れば、私も会社員時代にコーチングを学び、やがて独立しました。
今は、厳密には“会社員”ではありませんが、組織の中で働いています。
確かに、会社員の方が安定しているかもしれません。ただ、会社でコーチング“だけ”に思いきり取り組める環境は、なかなかありません。

ウエイクアップの社員にはコーチ専業の社員はいません。副業でコーチングをしている人が大半ですし、エグゼクティブコーチもほとんどが外部の方にお願いしています。CTIのファカルティも、私以外は全員外部委託です。

「独立してコーチとして生きる」ことには、正直、夢があります。私のまわりのファカルティも、ほとんどが独立コーチです。
彼らの話を聞くと、独立コーチとしての働き方に心惹かれる方も多いのではないでしょうか。

しかし、独立したコーチは、コーチングだけをしていれば良いわけではありません。
「コーチングの質」は常に見られており、評価が芳しくなければ契約は続きませんし、紹介も増えません。
コーチ紹介サービスに登録しても、質が低ければ仕事は回ってきません。

また、どれだけ良いコーチングをしていても、世の中に知られていなければ新たなクライアントに出会うことは難しいものです。そのため「マーケティング」も大事な仕事ですし、コーチとして軌道に乗った後でも新規開拓の努力は常に必要になります。
ホームページを作ったり、SNSでコーチングのことを発信しているだけで、次々と依頼が来るわけではありません。

つまり、“コーチング事業”を一人で続けていく覚悟も必要なのです。
この点で、安定感は企業の一員でいるのとは比べものになりません。

一方で、独立には多くの良さもあります。
やりたいことに時間を使えるし、「自分らしく」働ける実感もあります。
その“自由”と“リスク”をどうバランスさせるか、がポイントなのでしょう。

会社員でありながら、副業としてコーチングに取り組むことには、特有の良さもあります。
本業とはまったく違うフィールドで人と向き合うことで、普段の仕事では出会えない価値観や考え方に触れられますし、コーチングのセッション自体が”仕事”というより、むしろ自分の楽しみや刺激になります。

私の経験では、お金のため、というより「やりたいからやっている」感覚が強く、毎回新しい出会いや発見があることが、純粋に面白かったのを覚えています。
副業としてコーチングを続けることで、本業に対しても新鮮な気持ちになれたり、自分自身の成長につながる実感を持てたりしました。

会社員としてコーチングを続けている時代は、どうしても土日や夜間にセッションの機会が多くなっていました。
充実してはいたものの、体力的には厳しいと感じることもありました。家族との関係にも配慮が必要で、正直、葛藤や気をつかうことも多かったです。ただ、そのぶん、コーチングをする意味について家族と話す機会にも恵まれました。
家族と対話する中で、コーチングが自分にとってどんな存在なのかを、改めて考える良い時間にもなったと感じています。

では、会社員コーチの安定性はどうでしょうか。
会社組織で働く以上、すべてが自分の思いどおりにいくわけではありません。時には自分の価値観と向き合い、与えられた役割や仕事にどのように自分をフィットさせるか、工夫や思考の転換が必要になる場面も少なからずあります。そもそも、会社員だからといって安定しているとは限らない、と私自身も痛感しています。

例えば、私のコンサルタント時代の初期には、上司と合わず“干されて”しまった時期がありました。
家族もいたので、簡単に転職できる状況でもなく、かなり悩み苦労しました。
その後、仕事が軌道に乗った後も「また干されるのでは」という不安が消えることはなく、その恐怖から一生懸命働かざるを得ませんでした。

コーチング的には、恐怖から行動するのはあまり望ましいことではありませんが、当時はそのような状況でした。

ここまで書いてみて、会社員コーチと独立コーチ、どちらが「いい」と思いますか?

私は会社に所属しながら、コンサルの付属サービスとしてコーチングをしていましたが、「もっと全力でコーチングをやりたい」と思い、独立を決意しました。

しかし、「コーチングを学んだから、コーチとして独立する!」と一直線に決断できるものでもないでしょう。
コーチという“職業”を選ぶうえで、自分は何を大切にしたいのか、さまざまな視点から考える必要があると思います。

きっと、「独立してコーチとして生きる」ことや会社でコーチングを続けることの奥には、『自分が本当に大切にしているもの』が隠れているはずです。
ある特定の視点に固執していないかを、じっくり考えてみることも大切ではないでしょうか。

そして振り返ると、自分の人生を深く見つめ直すためにコーチングは、とても有効な手段だと改めて感じています。