「あなたは職場の人間関係で悩んでいませんか?」
「はい」と答えた方、悩んでいるのはあなただけではありません。
「いいえ」と答えた方、あなたは運がいい、もしくはそこには働きやすい環境や雰囲気を作ってくれているリーダーやメンバー(達)の存在があることでしょう。
「職場はいいけど、家庭がねえ」と答えた方、今回お伝えすることは職場だけでなく身近な人間関係でも役に立ちますので、是非最後まで読んでいただけたら幸いです。
さて、一体どれくらいの人が職場の人間関係について悩みを感じているのでしょうか?
厚生労働省が、平成 24 年に全国13,332の事業所と17,500人の労働者を対象に行った「労働安全衛生特別調査」によると、「仕事や職業生活に関する強い不安、悩み、ストレス 」を感じていると答えた労働者の割合は、 全体の60.9%にのぼりました。
その理由の内訳をみると、「職場の人間関係の問題」(41.3%)が最も多く、次いで「仕事の質の問題」(33.1%)、「仕事の量の問題」(30.3%) となっています。
寝ている時間を外したら、私たち社会人が1日の半分以上の時間を過ごすのが職場です。
誰もが安心して気持ち良く仕事をしたいと思っているはずなのに、一体どうしてこうなってしまうのでしょうか?
夫婦・カップルの関係性、コミュニケーションについて40年以上にわたる科学的研究で世界的有名なジョン・ゴットマン博士によると、関係性に決定的にダメージを与える行動として、次の4つを挙げています。
———————
1.批判/非難
2.防御
3.侮辱
4.無視・逃避
———————
これはカップルの研究をベースにしたものですが、組織行動の研究においても、同様に職場、組織の関係性にも適応できると考えられており、「コミュニケーションの4毒素」と呼ばれています。
では、1つずつ見ていきましょう。
1.批判/非難:
仕事においては、厳しいフィードバックや耳痛い真実を伝える必要がある場面はあります。
けれど、相手の性格、人格、能力を傷つけるような言葉は攻撃と受け取られ、関係性を壊します。
例: 「よかれと思って情報提供したのに、何も改善されていません。結局あなたにはやる気がないんですね」
2.防御:
相手から攻められたら、自分を守りたくなるのは人間の性です。
ただ、弁解や言い訳はむしろ火に油を注ぎます。
例:「他のプロジェクトだって忙しいんだ。この仕事だけをやっているわけじゃないのに、なんでわかってくれないんだ!」
3.侮辱:
皮肉たっぷりな物言いや嫌味、冷笑などは、相手だけでなく、職場の空気を凍らせるのに十分です。
侮辱的な言葉は相手に嫌悪感を抱かせ、やる気を削ぎ、人間関係には猛毒として作用します。
例:「で、君、会社に何しに来てるの?」「あー、あの給料ドロボーね。」
4.無視・逃避:
前述の3つの毒素によって職場にマイナス感情が蔓延してくると、次にやってくるのは無視・逃避で、職場は徐々に殺伐としてきます。
例:「おはようございます。。。。(シーン)」「皆さん、いかがですか?。。。(質問者には目を合わせず黙って下を向く)(一部でクスクス笑い)」
さて、このメルマガをお読みの皆さんのチーム、職場ではこれらの「4毒素」はどのくらいありますか?
もしくは、自分がついやってしまっていると思う「毒素」はありましたか?
こう訊かれるとちょっとドキッとされるかもしれませんが、どうぞご心配なく。
これらの行動が0%というチームや組織はまずありません。
一方、こうした否定的なコミュニケーションが肯定的な関わりを大きく上回る場合、職場のメンタルヘルスや離職率などの問題が起きてくると研究では示唆されています。
毒のある行動は多くの場合、無自覚に行われています。
いわば本人のコミュニケーションスタイルの癖であったり、チーム、組織の文化として「伝統的に」引き継がれているものだったりすることが大半です。
ここでのポイントはそこに自覚があるかどうかなのです。
では、これらの4毒素についてどのように対処していったらいいのでしょう。
ここではシンプルに、3つをお勧めしたいと思います。
===========
1) 「4毒素」についての教育啓蒙をチームで行い、
共通言語とする
2) ゴットマン博士の提唱する「解毒剤」を行う
3) リーダーのあり方として「毒素」の奥にある願いを
聞き取ろうとする
===========
1) 「4毒素」についての教育啓蒙をチームで行い、共通言語とする
4毒素がチームの生産性やモチベーションにどれだけ影響を与えているか、ということをリーダーが教育し、チームの中で共通言語にしてしまうことです。
「ゴメン。今、俺防御しちゃったね」などと笑って軽く話せるところまでいけば、大分定着してきた証拠です。
2) ゴットマン博士の提唱する「解毒剤」を行う
「解毒剤」ですが、例えば、相手の人格を非難するのではなく、行動を客観的にフィードバックし、将来への期待を伝える、などがあります。
3) リーダーのあり方として「毒素」の奥にある願いを聞き取ろうとする
「毒素」をどのように捉えて関わるか、というリーダーのあり方も大きく影響を与えます。
ゴットマン博士は「不満の背後には夢がある」という表現をされていますが、毒素の奥にはその人なりの「思いや願い」があるものです。
「あいつはああいうヤツなんだ」という決めつけを一旦脇に置いて、その人の奥にどんな思いがあるのかを聴けたなら、よりよい職場を作る上で大事な情報となる可能性は高いと言えます。
さて、ここまでお読み頂いて、皆様はどのような感想をお持ちでしょうか。
「それは確かに理想的かもしれないけど、そんなことやってる余裕も時間もないんだよ」
と言った声もありそうですね。
組織「風土」とはよく言ったもので「関係性創り」は「土壌」改良のようなものです。
目に見えにくい職場の「関係性」も、腰を据えて取り組めば必ず変化が起こります。
まずは目の前の職場の人間関係から、まさに今日のあなたの行動から変化を起こしてみませんか?
参考:ゴットマン・インスティテュート(英語) https://www.gottman.com/
最近のコメント