2015年 11月 の投稿一覧

「リーダー育成とコーチング」 ~ コーチングって、役立つの? ~

これまで長年にわたって、企業の主にリーダー/マネジャー層を対象としたリーダーシップ開発に携わってきました。
その中で、「プレーヤーとしては優秀なのに、リーダーとしてはイマイチ、マネジメントはうまくない」という課題に出会うことが多くあります。

ではいったい、優秀なプレーヤーが優れたリーダーへと成長を遂げるには何が必要なのでしょうか。

私は、意識の変化、つまり、今までのやり方で「通用すること」と「通用しないこと」に気づき、新しい方法に踏み出すこと、

“一馬力の限界に気づき、そこから脱皮する”

ことが、とても大切なことの一つだと考えています。

ところで、「リーダーとは何でしょう?」
様々な定義がありますが、とてもシンプルに言えば、リーダーとは、

“共に力を合わせていける、互いの力を出し切っていける環境・状況をつくれる人”

だと私は思います。

それでは、このような意識の変化はどのようにして起こるのでしょうか。
リーダー育成のための施策、アプローチは多々ありますが、中でもコーチングはとても有効な関わりだと感じています。

コーチングの大きな目的の1つに、

「自分の思考行動パターンに気づき、自覚的に行動を選択できるようになること」

があります。
例えば、多くのタスクを抱えて仕事をしていることをイメージしてみてください。
そのような状況の中、「忙しいのは(負担が大きいのは)当たり前、しんどいけれど仕事はそういうものだから…」と、そのままの状況を無抵抗に受け入れていることはありませんか?

自覚的な行動の選択とは、その状況を受け入れる前に、「どうしてこんなにも忙しいのだろう?」「どうしてうまくいかないのだろう?」ということに、しっかりと向き合うことから始まります。

ここで、あるリーダーの事例をご紹介します。
その方は、結果を達成するという目標のために、自分自身が多くの仕事を抱え込んでしまって忙しくなり、部下の指導や成長に割く時間がないという状況に陥っていました。

本当は、部下が成長するほうが良い結果を達成することはわかっているのに、経験も豊富で一番優秀なプレーヤーである自分が多くの行動をしていました。
でも、それは自分が本当に望んでいたリーダーの姿ではなかったのです。
そこから、私とのコーチングの中で「どうしてこんなにも忙しいのだろう?」「どうしてうまくいかないのだろう?」ということに、しっかりと向き合うことになりました。

自分の思考行動パターンを振り返った結果、1つの気づきが生まれました。
それは、「自分が責任を背負い込みすぎている状態は、メンバーの成長や活躍の機会を奪っている」という気づきでした。
その気づきを得てから、その方の行動が変化していきました。

リーダーがメンバーに荷を分け与え、サポーターに回るようになると、知恵の受け渡しが始まります。
私はその方とのコーチングの中で

「部下を育てたければ、今の自分のど真ん中の仕事、これだけは絶対に渡せないと思うものを渡したらどうでしょう。」

と提案したことがあります。
そうしないと、部下の意識や仕事のステージが上がりませんし、雑用やリスクのない仕事をたくさんさせても部下が大きく育つことはありません。

ただし、これは丸投げとは違います。
重要な仕事を部下に任せたところから、リーダーは部下のサポーターに回るというとても大切な役割が発生し、そしてここには、リーダーにとっての怖れも当然存在します。

任せた仕事が失敗する恐れ、手放すことの怖さ、新しい行動に踏み出す不安、プレーヤーからリーダーに役割がシフトしていく中ではこのような感情が起きてきます。

だからこそリーダーは、自分はどんなリーダーなのか、リーダーとしてどうありたいのかを忘れないようにすることが大事だと思うのです。
また同時に、部下と伴走するサポーターやコーチとしての役割は、今後のリーダーに必須の役割でもあります。
一馬力で疾走するリーダーから、周りを生かす何馬力ものリーダーへ。
リーダーの進化のために、もっともっと組織でコーチングが使われていくことを願っています。

 

 

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「生きている会議の創り方、進め方」 第2号 ~ 会議の雰囲気を意図的に創る ~

その会議の目的を確認した上で会議を始めることの大切さを、前回の第1号でお伝えしました。
今日の第2号では、「会議の雰囲気を意図的に創る」をお伝えします。

皆様もこれまでたくさんの会議に出席してこられたと思いますが、それぞれに、さまざまな雰囲気があったことと思います。

ある会議は‘活き活き’とした雰囲気だったかもしれませんし、また別の会議は‘真剣な’雰囲気、さらにまた別の会議は‘和やか’な雰囲気だったかもしれません。
或いは、恐怖のあまり‘生きた心地がしない’会議もあったかもしれません。

会議の雰囲気は、その内容や主催者の態度や進行の巧拙、発言者の発表内容、参加者の感情など、いくつかの要因が重なった成り行きとして偶発的に現れるものととらえることが一般的ですが、

実は会議の雰囲気は意図的に創ることができます。

その会議の目的を達成するために必要な雰囲気は、自分達で意図的に創ることができるのです。

具体的な方法は簡単です。
まず主催者が、

「この会議の目的を達成するために、私はこの会議をこんな雰囲気で進めたい」

という意図を全体に表明します。
次に、

「この会議の目的を達成するために、あなたはこの会議をどんな雰囲気で進めたいですか?」

と参加者全員に問いかけ、1人一言で発言してもらいます。

可能な限り、全員の発言を求めたほうが効果的です。
参加人数の都合等でそれが叶わない場合は、参加者を2人ないし3人組に分ける形で、自分が創りたい雰囲気を全員が言葉にして発言する時間をとるといいでしょう。

そして、主催者並びに参加者全員が意図する雰囲気を、参加者全員の目に入る場所に書き出します。
ここで全員の答えをまとめる必要はありません。
ただ、それらを1つずつ読み上げる形で、再確認します。
手順はこれだけです。
ぜひ、今日から皆様も試してみてください。

少しだけ解説させていただくと、目的の達成のために参加者全員で力を合わせるにあたり、どんな雰囲気ならばそれがより容易に実現できるのかということを、私たちの無意識や体感覚は既にその答えを知っています。

ところが、一般には、その答えを言葉にして意識化し意図する機会のないまま会議が始まりますので、いつもどおりの言動パターンの結果として生まれてくる雰囲気で、会議が進んでいくことがほとんどです。

その結果として生まれる雰囲気が、会議の目的の達成に資するものであれば問題はないのですが、もし、会議の目的から見てその雰囲気が逆効果なのであれば、リーダーであるあなたは、会議の雰囲気を全員で意図的に創ることにチャレンジしてみてください。

私たち人間はとてもよくできたシステムで、目的が設定されると、その達成に向けて、意識や無意識が作動し始めます。
無意識がセンスしてくれた目的達成に資する雰囲気を、自分の意図として発言することでその会議への当事者意識も強まりますし、それが、会議という生き物が息を吹き返すきっかけを創るのです。

皆様も、会議という生き物の雰囲気を意図的に創ることを、今日から楽しんでみてください。

今回も最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。

 

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「ウエイクアップの物語」 第2号 NCRW

コーアクティブ・コーチング(※)の礎の1つがNCRWです。

NCRWとは、

”People are naturally creative, resourceful, and whole.”

という英文の中の単語の頭文字をとったものです。

CTIジャパン創業当初は、「クライアントはもともと完全な存在であり、自ら答えを見つける力を持っている」と意訳してお伝えしていました。

現在は日本語では「人はもともと創造力と才知にあふれ、欠けるところのない存在である」と訳しています。

(* コーアクティブ・コーチング は登録商標です)

 

NCRWは、「ウエイクアップの物語」という文脈においても、最も基本的かつ大切な要素です。

「ワークショップでお伝えしているNCRWをお客様との実務的なやりとりの中はもちろん、オフィス内で体現することが大切だよね」と、当時ほんの数名だったスタッフと夜遅くまで熱く語り合っていたことを、昨日のことのように思い出します。

 

そこには、所謂「医者の不養生」にならないよう、知行合一の一貫性を持って事業を展開したい、という私たちの願いがあり、今も変わらず、そこに熱があります。

同時に、NCRWがビジネスの現場で当たり前になることが必要だ、という想いもあります。

これは私のコーチとしての経験からですが、「答えを見つける力を持っているのは上司である自分だけだ」、というNCRWとは真逆の人間観で仕事を進めていくリスクの大きさは、多くの方々が頭では理解しています。

また、あなた自身はどんな上司と仕事をしたいですか?と問いかければ、

「この人は自ら答えを見つける力がない」

という視点を持つ上司ではなく、

「この人は自ら答えを見つける力を持っている」

というNCRWの人間観で協働できる上司を多くの方が求めています。

読者の皆様も、きっとそういった上司を求めていますよね。

 

ところが、何らかの原因で、結果として、自分の部下には自ら答えを見つける力がない、というスタンスで部下と接してしまい、結果として無用の苦労をしている方が未だに多いと感じています。

 

ちょっと脱線しますが、電子が粒か波かを測定する実験において、測定者が電子は粒だと思って測定すると粒の結果になり、電子は波だと思って測定すると波の結果になる、という話を聞いたことがある方もいらっしゃるかと思います。

 

人間も電子と同じで、目の前の部下のことを、自ら答えを見つける力を持っていると観て接すれば、部下は自ら答えを見つけますし、逆に、この部下は自ら答えを見つける力がないと観て接すれば、そのとおりになります。

 

もちろん緊急事態などの例外はあるにせよ、基本的なスタンスとして「目の前のこの人は自ら答えを見つける力を持っている」という互いの人間観の中で協働することが、人やシステムが本来持っている可能性を拓くためには必要だと考えています。

 

話をウエイクアップに戻しましょう。

基本的な人間観としてのNCRWは、ウエイクアップ関係者の中では定着しています。

そのことは、お互いの本領発揮を促し合いながらの協働を育む土壌という、有難い内部環境をもたらしています。

結果として、権限委譲が進むこともNCRWがもたらすギフトの1つでしょう。

 

一方で、NCRWは全ての経営課題を解決してくれるものではありません。

より突っ込んで言えば、NCRWの人間観をもとに事業を展開していくなら、どうしても手当てしなくてはいけないことがあります。

それを一言でいえば、

 

「意図的な協働関係創り」です。

 

コーチングの現場では当たり前の意図的な協働関係創りは、事業経営の文脈でも必須のプロセスでした。

NCRWで互いに関わるということは、自分と相手、それぞれが互いの当事者意識を育み、「私はこうしたい」という意思を持つことにつながります。

それぞれの「こうしたい」が出そろったところで、組織としてはどうするのか、という次のステップがやってきます。

互いの意見が異なる時にどのように意思決定するのか、という予めの合意が必要ですし、さらに、何のために協働するのかという目的の確認も、意図的な協働関係創りには欠かせません。

 

組織運営における意図的な協働関係創りの大切さを、ウエイクアップは身をもって体験してきました。

次号以降で、そのことに触れていきます。

今回も最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました。

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コーアクティブ・ビジネス会話術 「部下の指導における傾聴のポイント」

職場での会話で意見の違いが出てきた時に、皆さんはどのように会話をしますか?
 
コーアクティブ・コーチングでは、相手に意識を集中して傾聴することをコーチの傾聴として伝えていますが、職場ではどうでしょう。
 
傾聴の大事さはわかってはいるけど、傾聴できないケースなどはありませんか?
 
例えば、部下の意見が自分の思っていることと違う場合や、部下の報告に不満がある時はどうでしょうか。
すぐに、部下の意見をさえぎったり、自分の意見を押し付けたりしていないでしょうか。
そうすると、部下との信頼関係や部下のモチベーションを下げる要因になりかねません。
 
それでは、どうしたらいいのでしょうか。
 
意識してもらいたい傾聴のポイントは、「一旦、受け止める」という傾聴です。
会話の中でたとえ意見が違っていたとしても、「一旦、受け止める」を意識した傾聴をすると、相手はしっかりと話を聞いてくれた感をもちます。
部下への指導は、「一旦、受け止める」から「人に焦点」を当てていくのがポイントになります。
 
ただ注意する点として、部下の意見をすべて受け入れるということではありません。
部下の意見をしっかりと聴く、まずは、受け止めてから、自分の意見を伝えるということです。
 
対話例をご紹介しますので、ぜひ職場での会話として参考にしてください。
 

■□■————————

<悪い例>

部下: ウエイクダウンへの営業の事なのですが、なかなか
    上手くアプローチ出来ておらず、これからどう進めて
    いったらいいでしょうか?

上司: その話、前も同じようなことで相談してきたよね。
    あの時指示したことはやったの?

部下: はい、それはやってみましたが、思ったほどには
    うまくいっていなくて、私としてもなんとか食い
    込みたいと・・・

上司: (途中でさえぎって)
    今日はどんな話をしに行ったの?

部下: 今日は雑誌広告のお願いです。

上司: それって順番が違うだろ。Web広告については
    どうなってんだ?

部下: はい、それはまだ・・・

上司: だから進まないんだよ。何度かこのことは指摘して
    るよな。なんで指示通りに動かなかったの?
    (過去の原因分析で詰める)

部下: (萎縮して)ええ、確かに・・・。
 

——————————

<良い例>

部下: ウエイクダウンへの営業の事なのですが、なかなか
    上手くアプローチ出来ておらず、これからどう進めて
    いけばいいでしょうか?

上司: ウエイクダウンかぁ。なかなか苦戦しているよう
    だね。(一旦、受け止める)

部下: はい、そうなんです。考えられる手は尽くしている
    のですが、どうも、担当者の懐に入り込めていない
    感じがしています。

上司: 努力してそういう状態が続くのは、橋本君(部下)
    も歯がゆいよな。(人に焦点)
    俺も経験があるよ。

部下: 課長もそういう経験おありなのですか!?

上司: もちろんだよ。じゃあちょっと一緒に対策を考えて
    みようか。

部下: はい、お願いします!

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ポイントは 「一旦、受け止める」傾聴です。
この傾聴があって、部下のやる気に繋がる「人に焦点」が生きてきます。
「人に焦点」とは、事柄や問題の話をするのではなく、その人の気持ちや思いに焦点をあてることです。
みなさんも職場で、ぜひ試してみてください。

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ウエイクアップ・リーダーズ・マガジン Vol.4 「生きている会議の創り方、進め方」  第1号 〜 目的の明確化と共有 〜

「あなたが主催している会議は、生きていますか?
それとも、死んでいますか?」

ここで、“生きている会議”とは、メンバーが主体的に参加し、その会議の目的に沿った形で運営され、意図した結果を生み出している会議を言います。
生きている会議には活気が溢れ、多くの参加者が顔を上げて、その会議を共に創っています。

逆に死んでいる会議とは、メンバーの主体的な参加が見られず、会議を開くこと自体が目的化している会議を指しています。
死んでいる会議は、ごく一部の声の大きな人の発言のみが目立ち、参加者の多くは下を向いてその会議が早く終わることを待っています。

経験的には、定例化している大型の会議ほど、発足当初の型が機能しなくなり死んでしまっていて、新たに生まれ変わるためのハードルが高いケースが多いようです。
ですが、会議という存在が関係性という生き物の1つの形態である以上、意識的、意図的なデザインによって息を吹き返すことが可能だ、と私は考えています。

このシリーズ「生きている会議の創り方、進め方」では、システム・コーチとして、お客様のリアルなビジネス現場における会議に数多く同席させていただいた私の体験から、皆様がリーダーとして生きている会議を創り、進めていくためにはどうすればいいのかについて、論を進めていきます。
第1号である今号では、「会議の目的を明確にし、それを参加者と共有すること」をお伝えします。

先に触れたように、会議の生死を分ける大きな要素は、参加者の主体性の有無です。
参加者の主体性を喚起するために必要な要素として欠かせないのが、その会議の目的の明確化と共有です。
その会議の目的は何なのか、決定事項の報告なのか、議論を経ての意思決定なのか、部門間の情報交換なのか、結論を求めない対話の場なのか、それぞれの会議によって、その目的はさまざまだと思います。

それがどんな目的であれ、その目的が明確化され参加者に共有されれば、参加者にとって、その目的に沿って安心して発言することの素地が整います。
関係性という生き物の真理として、複数の個体が力を合わせて協働するには、共通の目的が必要だからです。

逆に、目的が共有されていないと、参加者としては、上司の意向やその場の空気を乱すことを恐れて様子見をしてしまうか、もしくは、いたずらに自己主張を重ねるか、のいずれかの可能性が高まります。
共通の目的が無いと協働は難しいものとなり、それぞれの個体は個別の利害や感情に従って行動してしまいがちです。

あなたが会議の主催者であれば、参加者を招集する際や会議を開始する時に、「この会議の目的は○○です」と参加者に伝えることを、今日から試してみてください。
それも、一回だけやればいいということではなく、毎回の会議の冒頭など、ことあるごとに、その会議の目的を周囲に伝え続けることをお勧めします。

場合によっては、同じ会議の中でも、議題毎に目的が異なることもあるでしょう。
その場合は、「今回この議題を取り上げる目的は○○です」という具合に、議題毎に、その会議の中で何を実現したいのか、目的を明確にしてからその議論に入ることになります。

もし、あなたが会議の主催者でなかったとしても、お勧めしたいことは同じことです。
会議全体、もしくは議題毎の目的を確認することは、会議の主催者でなくともできることです。
リーダーとして、その会議の主催者をアシストする意図で、会議の目的を主催者に確認し、それを他の参加者と共有することに取り組んでみてください。

今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

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