伴想人®の もり(工藤守彦)です。
私自身がコーチングを受けた経験から、企業で働くリーダーには、
コーチングを通じ自分を見つめなおすことが極めて有効と考えていました。
ある時、自分がコーチとなり、務めている会社で
後輩たちにコーチングをしたいと思いが沸き上がってきました。
どうせやるならプロの実力がないと会社の皆さんに失礼ですので、
2020年からCo-Active®コーチングを学びはじめました。
そして2022年にコーチングの世界標準であるCTIの認定試験に合格し、
プロの資格であるCPCC®(Certified Professional Co-Active Coach)を
取得することができました。
2022年から社内コーチを開始し、70名以上(450時間)の会社の仲間を
クライアントにしてコーチングを実施してきました。
コーチングの際、私はクライアントに必ず聞く質問があります。それは
「あなたは会社で、じっくり話を聴いてもらったことがありますか?」です。
大半の人は「ない」と答えます。また、あると答えた人でも
「1回だけ」という人がほとんどです。会社では忙しく、
なかなかじっくり話を聴いてもらう機会は少ないのかもしれません。
じっくり話を聴いてもらったことが「ある」と答えた人たちに、
次の質問をしました。「聴いてもらって感じたことは?」です。
答えは異口同音に「気持ちよかった」「スッキリした」
「整理がついた」「道筋が見えた」です。
話を聴いてくれた人が、必ずしも何かアドバイスをしたかというと、
そうではないのです。ただただ、じっくり話を聴いてくれただけで、
全員が非常にポジティブな気持ちになったのです。
社内のコーチングのクライアントは、部下を持つ管理職の方が多いです。
自然と部下とのコミュニケーションの話しになり、1on1の話題になります。
どんな1on1が理想的か聞くと、みなさん“会話が盛り上がる”ことを挙げます。
そのため、ついつい上司が話し過ぎたり、部下の答えを誘導したり、
自分の経験やアドバイスを押し付けたり、気が付くと7・8割の時間、
上司が話していることが多いようです。
確かに会話は途切れず盛り上がったように感じるかもしれませんが、
部下は言いたいことや、本音が言えたのでしょうか。
私のクライアントに、非常に部下思いでサービス精神が旺盛な方がいて、
部下とのコミュニケーションに悩んでいました。
彼の1on1の様子を聞くと、部下に話題を振ったり、答えを催促したり、
自分ばかり話すものでした。なぜそうするか聞いたら、
沈黙はコミュニケーションにとって避けるべき存在
との思いが強かったようです。
一方で、彼は自分が話せば話すほど、部下が話すスペース(時間や主導権)が
なくなることも感じていました。彼に、たまには沈黙を覚悟し、
部下が話し出すことを待ってみることを提案し、実践してもらいました。
部下は上司の様子が変わったのを不思議がっていましたが、少しずつ
自分から話をするようになったとのことです。
たまには“会話が盛り上がる”を手放し、相手が思っていることを、
じっくり話せるように、相手にペースを渡してもいいのではないかと思います。
心から相手を思う質問を投げかけ、すぐに返事が来なくても、
たとえ沈黙が続いたとしても、時にはいいかもしれません。
相手の考えがまとまるまで、本音を話す気になるまで、待つ時間が大切
かもしれません。
私が思う良い1on1とは、“本音を言える1on1”と、“またやりたいと思う1on1”です。
相手の言葉と心に耳を澄ませて、じっくり話を聴き、
「気持ちよかった」「スッキリした」「整理がついた」「道筋が見えた」
と思ってもらえる1on1を目指し、傾聴を大切にしていこうと思います。