ネガティブ・ケイパビリティ

ウエイクアップ・伴想人(ばんそうびと)
「まさこ」(田中雅子)です。

現代社会において我々はかつてないほど
「すばやさ」
「わかりやすさ」
「効率性」
を求められています。

クイックなソリューションを求められる
時代に重視されるのは
「ポジティブ・ケイパビリティ」、
すなわち情報を収集し分析し計画を立て
物事を処理する、問題解決能力です。

一方、最近は
「ネガティブ・ケイパビリティ」という
概念も注目されるようになりました。

枝廣淳子さん*の最新刊
(「答えを急がない勇気」~ネガティブ・
ケイパビリティのススメ~)を読んで、
考えたことを記したいと思います。
*大学院大学至善館教授、有限会社イーズ代表取締役、環境ジャーナリスト、翻訳家

「答えが見えない問題に対して、
性急に解決策や理由を求めずに
そこに留まり続ける力」、これが
ネガティブ・ケイパビリティです。

生みの親はイギリスのロマン主義の詩人
ジョン・キーツで、シェイクスピアの
ように偉大な仕事を達成する人間の
特質として表された言葉だそうです。

20世紀以降、精神医学の分野において
この概念が広まりました。
相手(患者)を理解する時に、
先入観をもたず、知識や理論をすぐに
あてはめず、「今この瞬間に、まっさらな
気持ちと頭で相手を受け容れる」時に、
ネガティブ・ケイパビリティが発揮されます。

ネガティブ・ケイパビリティは、
変化が大きく先の見えない現代において、
創造性の発揮が求められる時、
文化・価値観の異なる多様な人々との
協働の場において重要な心のありようです。

  • どうにも答えのでない、対処しようのない事態に耐える
  • 曖昧さやパラドックスと共存しそれを許容する
  • 「すべてはわかっていない」状態をよしとし、不確実で曖昧な状態のなかにとどまる

一言で表現するならば、
「不確実性を許容する高度な能力」であり
「知的寛容さ」です。

但し、諦めること、現実を甘受すること、
思考停止することとは違います。敢えて
わからなさの中にとどまり続けること、
意思と目的を持って、そこでは結論を
ださないでおくことなのです。

その結果として、
小手先の早急な結論や判断ではなく
「新しい思考や認識の出現」につながるのです。

読者の皆さんは、ここまで読んで
気づかれたことでしょう。
そう、これは、
コーアクティブ・コーチングにおいて、
コーチが発揮する能力でもあります。

著者の枝廣さんも述べられていますが、
大きな「器」で受け容れる、
場を「ホールド」する、
共創的な対話において自分の前提を
「サスペンド」する
こと等とも重なるものです。

私はこの言葉に出会って、
ちょっと気が楽になりました。
素早く判断できない、常に迷い揺れ動く、
もやもやしたものを抱え続けている自分を
疎ましく思ったり、
焦ったりすることが多かったからです。

もしかしたら私は
ネガティブ・ケイパビリティが結構高い
かもと思うようになりました
(開き直りですね)。

私のクライアント(メンティ)が、
「答えがわからない今の自分では
対話が怖い」と言っていたことも
思い出しました。そんな時には、
「ネガティブ・ケイパビリティを磨く
チャンスだよ」と伝えたいと思います。

仕事でも、コーチングでも、
ポジティブ・ケイパビリティと
ネガティブ・ケイパビリティ双方を
有効に使い分け、
二刀流を目指したいものです。

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