「リーダー育成とコーチング」 ~ コーチングって、役立つの? ~

これまで長年にわたって、企業の主にリーダー/マネジャー層を対象としたリーダーシップ開発に携わってきました。
その中で、「プレーヤーとしては優秀なのに、リーダーとしてはイマイチ、マネジメントはうまくない」という課題に出会うことが多くあります。

ではいったい、優秀なプレーヤーが優れたリーダーへと成長を遂げるには何が必要なのでしょうか。

私は、意識の変化、つまり、今までのやり方で「通用すること」と「通用しないこと」に気づき、新しい方法に踏み出すこと、

“一馬力の限界に気づき、そこから脱皮する”

ことが、とても大切なことの一つだと考えています。

ところで、「リーダーとは何でしょう?」
様々な定義がありますが、とてもシンプルに言えば、リーダーとは、

“共に力を合わせていける、互いの力を出し切っていける環境・状況をつくれる人”

だと私は思います。

それでは、このような意識の変化はどのようにして起こるのでしょうか。
リーダー育成のための施策、アプローチは多々ありますが、中でもコーチングはとても有効な関わりだと感じています。

コーチングの大きな目的の1つに、

「自分の思考行動パターンに気づき、自覚的に行動を選択できるようになること」

があります。
例えば、多くのタスクを抱えて仕事をしていることをイメージしてみてください。
そのような状況の中、「忙しいのは(負担が大きいのは)当たり前、しんどいけれど仕事はそういうものだから…」と、そのままの状況を無抵抗に受け入れていることはありませんか?

自覚的な行動の選択とは、その状況を受け入れる前に、「どうしてこんなにも忙しいのだろう?」「どうしてうまくいかないのだろう?」ということに、しっかりと向き合うことから始まります。

ここで、あるリーダーの事例をご紹介します。
その方は、結果を達成するという目標のために、自分自身が多くの仕事を抱え込んでしまって忙しくなり、部下の指導や成長に割く時間がないという状況に陥っていました。

本当は、部下が成長するほうが良い結果を達成することはわかっているのに、経験も豊富で一番優秀なプレーヤーである自分が多くの行動をしていました。
でも、それは自分が本当に望んでいたリーダーの姿ではなかったのです。
そこから、私とのコーチングの中で「どうしてこんなにも忙しいのだろう?」「どうしてうまくいかないのだろう?」ということに、しっかりと向き合うことになりました。

自分の思考行動パターンを振り返った結果、1つの気づきが生まれました。
それは、「自分が責任を背負い込みすぎている状態は、メンバーの成長や活躍の機会を奪っている」という気づきでした。
その気づきを得てから、その方の行動が変化していきました。

リーダーがメンバーに荷を分け与え、サポーターに回るようになると、知恵の受け渡しが始まります。
私はその方とのコーチングの中で

「部下を育てたければ、今の自分のど真ん中の仕事、これだけは絶対に渡せないと思うものを渡したらどうでしょう。」

と提案したことがあります。
そうしないと、部下の意識や仕事のステージが上がりませんし、雑用やリスクのない仕事をたくさんさせても部下が大きく育つことはありません。

ただし、これは丸投げとは違います。
重要な仕事を部下に任せたところから、リーダーは部下のサポーターに回るというとても大切な役割が発生し、そしてここには、リーダーにとっての怖れも当然存在します。

任せた仕事が失敗する恐れ、手放すことの怖さ、新しい行動に踏み出す不安、プレーヤーからリーダーに役割がシフトしていく中ではこのような感情が起きてきます。

だからこそリーダーは、自分はどんなリーダーなのか、リーダーとしてどうありたいのかを忘れないようにすることが大事だと思うのです。
また同時に、部下と伴走するサポーターやコーチとしての役割は、今後のリーダーに必須の役割でもあります。
一馬力で疾走するリーダーから、周りを生かす何馬力ものリーダーへ。
リーダーの進化のために、もっともっと組織でコーチングが使われていくことを願っています。

 

 

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