最近になって、組織運営において「対話/ダイアローグ」が重要な要素であることが、ますます認識されつつあると感じます。
私自身もコーチとして、マネジメントの立場として、対話の機会に事欠きません。
そこで、あらためてここで『対話』と『議論』の違い、対話のコツについて考えてみたいと思います。
「ダイアローグ」の語源はギリシャ語の“dialogos”で、
“daia(間で)+legein(話)+os”、つまりは、
「人と人との間にある話」
と言われています。
この“間にある”というところが、対話の性質をうまく表していると思います。
例えば、「この新規事業をどうすべきか?」というテーマで会議をする場面を想像してみましょう。
まずは誰かが口火を切って、推進することに賛成の考えを述べたとします。
そこから先が議論になるのか対話になるのか、分かれていくところです。
議論の場合は、意見を述べる人の中には明確な方向性があって、その方向性に持っていきたいという意図があります。
なので、前に発言した人の考えが自分の方向に合っていればその意見を利用するでしょうし、反対の方向であれば、その意見を覆すための材料を盛り込むでしょう。
つまり、議論をするという時、最初から行き先ありきの場合が多いのです。
そうなると、行き先の違うものの間には必然的に対立構造が生まれ、なんとか相手の意見を覆そうと頑張ることになります。
結果として、どうにかなんらかの結論を出すことはできたとしても、その結論を想定していなかったメンバーにとっては違和感や不全感を残すこともあり得ます。
では、対話ではどうでしょうか。
私の経験では、対話の場にいる時の大きな特徴は、まずメンバーが自分の意見や立場を守ろうとしていないというところにあります。
それゆえに、オープンマインドで、他の人の意見や考えも「なるほど」と受け止めやすくなります。
それぞれが、相手が出している考えをオープンに受け止め合っていると、次第にその対話は、次の段階に入っていきます。
自分が発言していることの中に、最初から用意していたものばかりではなく、その場で思いついた、あるいはどこからか湧いてきたような考えが混じっていくのです。
そのような質の発言が誰かから始まると、それをきっかにして、他の人も同じような種類の、つまりその場で生まれ出たような考えを述べ始めるのです。
このあたりが、その人たちの間にあるものとでもいえる性質ではないかと思います。
個人的には“間にある”、というより、“間に生まれたもの”、という言い方のほうがしっくりくる感じです。
そこにいるメンバーがオープンマインドで自分の考えを述べ、相手の考えも受け止めていった先に生まれる“今ここにある智慧”といってもいいと思います。
先行きが不透明な経営環境の中では、もはや最初から想定できる答えに頼っているわけにはいかなくなっていることからも、対話で生まれるような“今ここにある智慧”を活かしていくことがますます必要とされているように思います。
面白いところは、同じメンバーでも議論になる時もあれば、対話に進展していくこともあることで、そこには対話を生み出す秘訣とでもいえるものがあると思います。
次回はその秘訣について紹介していきたいと思います。