リーダーズマガジン

コーアクティブ・ビジネス会話術 「部下の指導における傾聴のポイント」

職場での会話で意見の違いが出てきた時に、皆さんはどのように会話をしますか?
 
コーアクティブ・コーチングでは、相手に意識を集中して傾聴することをコーチの傾聴として伝えていますが、職場ではどうでしょう。
 
傾聴の大事さはわかってはいるけど、傾聴できないケースなどはありませんか?
 
例えば、部下の意見が自分の思っていることと違う場合や、部下の報告に不満がある時はどうでしょうか。
すぐに、部下の意見をさえぎったり、自分の意見を押し付けたりしていないでしょうか。
そうすると、部下との信頼関係や部下のモチベーションを下げる要因になりかねません。
 
それでは、どうしたらいいのでしょうか。
 
意識してもらいたい傾聴のポイントは、「一旦、受け止める」という傾聴です。
会話の中でたとえ意見が違っていたとしても、「一旦、受け止める」を意識した傾聴をすると、相手はしっかりと話を聞いてくれた感をもちます。
部下への指導は、「一旦、受け止める」から「人に焦点」を当てていくのがポイントになります。
 
ただ注意する点として、部下の意見をすべて受け入れるということではありません。
部下の意見をしっかりと聴く、まずは、受け止めてから、自分の意見を伝えるということです。
 
対話例をご紹介しますので、ぜひ職場での会話として参考にしてください。
 

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<悪い例>

部下: ウエイクダウンへの営業の事なのですが、なかなか
    上手くアプローチ出来ておらず、これからどう進めて
    いったらいいでしょうか?

上司: その話、前も同じようなことで相談してきたよね。
    あの時指示したことはやったの?

部下: はい、それはやってみましたが、思ったほどには
    うまくいっていなくて、私としてもなんとか食い
    込みたいと・・・

上司: (途中でさえぎって)
    今日はどんな話をしに行ったの?

部下: 今日は雑誌広告のお願いです。

上司: それって順番が違うだろ。Web広告については
    どうなってんだ?

部下: はい、それはまだ・・・

上司: だから進まないんだよ。何度かこのことは指摘して
    るよな。なんで指示通りに動かなかったの?
    (過去の原因分析で詰める)

部下: (萎縮して)ええ、確かに・・・。
 

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<良い例>

部下: ウエイクダウンへの営業の事なのですが、なかなか
    上手くアプローチ出来ておらず、これからどう進めて
    いけばいいでしょうか?

上司: ウエイクダウンかぁ。なかなか苦戦しているよう
    だね。(一旦、受け止める)

部下: はい、そうなんです。考えられる手は尽くしている
    のですが、どうも、担当者の懐に入り込めていない
    感じがしています。

上司: 努力してそういう状態が続くのは、橋本君(部下)
    も歯がゆいよな。(人に焦点)
    俺も経験があるよ。

部下: 課長もそういう経験おありなのですか!?

上司: もちろんだよ。じゃあちょっと一緒に対策を考えて
    みようか。

部下: はい、お願いします!

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ポイントは 「一旦、受け止める」傾聴です。
この傾聴があって、部下のやる気に繋がる「人に焦点」が生きてきます。
「人に焦点」とは、事柄や問題の話をするのではなく、その人の気持ちや思いに焦点をあてることです。
みなさんも職場で、ぜひ試してみてください。

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ウエイクアップ・リーダーズ・マガジン Vol.4 「生きている会議の創り方、進め方」  第1号 〜 目的の明確化と共有 〜

「あなたが主催している会議は、生きていますか?
それとも、死んでいますか?」

ここで、“生きている会議”とは、メンバーが主体的に参加し、その会議の目的に沿った形で運営され、意図した結果を生み出している会議を言います。
生きている会議には活気が溢れ、多くの参加者が顔を上げて、その会議を共に創っています。

逆に死んでいる会議とは、メンバーの主体的な参加が見られず、会議を開くこと自体が目的化している会議を指しています。
死んでいる会議は、ごく一部の声の大きな人の発言のみが目立ち、参加者の多くは下を向いてその会議が早く終わることを待っています。

経験的には、定例化している大型の会議ほど、発足当初の型が機能しなくなり死んでしまっていて、新たに生まれ変わるためのハードルが高いケースが多いようです。
ですが、会議という存在が関係性という生き物の1つの形態である以上、意識的、意図的なデザインによって息を吹き返すことが可能だ、と私は考えています。

このシリーズ「生きている会議の創り方、進め方」では、システム・コーチとして、お客様のリアルなビジネス現場における会議に数多く同席させていただいた私の体験から、皆様がリーダーとして生きている会議を創り、進めていくためにはどうすればいいのかについて、論を進めていきます。
第1号である今号では、「会議の目的を明確にし、それを参加者と共有すること」をお伝えします。

先に触れたように、会議の生死を分ける大きな要素は、参加者の主体性の有無です。
参加者の主体性を喚起するために必要な要素として欠かせないのが、その会議の目的の明確化と共有です。
その会議の目的は何なのか、決定事項の報告なのか、議論を経ての意思決定なのか、部門間の情報交換なのか、結論を求めない対話の場なのか、それぞれの会議によって、その目的はさまざまだと思います。

それがどんな目的であれ、その目的が明確化され参加者に共有されれば、参加者にとって、その目的に沿って安心して発言することの素地が整います。
関係性という生き物の真理として、複数の個体が力を合わせて協働するには、共通の目的が必要だからです。

逆に、目的が共有されていないと、参加者としては、上司の意向やその場の空気を乱すことを恐れて様子見をしてしまうか、もしくは、いたずらに自己主張を重ねるか、のいずれかの可能性が高まります。
共通の目的が無いと協働は難しいものとなり、それぞれの個体は個別の利害や感情に従って行動してしまいがちです。

あなたが会議の主催者であれば、参加者を招集する際や会議を開始する時に、「この会議の目的は○○です」と参加者に伝えることを、今日から試してみてください。
それも、一回だけやればいいということではなく、毎回の会議の冒頭など、ことあるごとに、その会議の目的を周囲に伝え続けることをお勧めします。

場合によっては、同じ会議の中でも、議題毎に目的が異なることもあるでしょう。
その場合は、「今回この議題を取り上げる目的は○○です」という具合に、議題毎に、その会議の中で何を実現したいのか、目的を明確にしてからその議論に入ることになります。

もし、あなたが会議の主催者でなかったとしても、お勧めしたいことは同じことです。
会議全体、もしくは議題毎の目的を確認することは、会議の主催者でなくともできることです。
リーダーとして、その会議の主催者をアシストする意図で、会議の目的を主催者に確認し、それを他の参加者と共有することに取り組んでみてください。

今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

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「歴史に学ぶ日本的なシステムとリーダーシップ」 第1回 ~ 錦の御旗 ~

<はじめに>

今回から皆さまにお届けする、新シリーズ 「歴史に学ぶ日本的なシステムとリーダーシップ」では、‘ちっちゃな頃から歴史好き♪’という私の一面を活用し、日本的なシステムとリーダーシップについての記事を連載していきます。

このシリーズを展開するにあたり、前提となる事実認識は書籍などの2次以降の情報に頼らざるをえず、従って何が真実かについて実は定かでないという慎重さと、先人達のかけがえのない人生に対する最大限の敬意と共に在る姿勢を、それぞれ大切にしたいと考えています。

さらに、私たち日本のさらなる成長を願う気持ちと、日本はリーダーシップの実践や組織開発という文脈でも世界に貢献できる、という私自身の視点が、本シリーズの下敷きになっています。

従って、歴史上の人物や組織を評価、評論することはこのシリーズの目的ではなく、現代に生きる私たちがそのトピックから何を学び、私たちの意識の進化にそれをどう活用できるか、という視点で論を展開していきたいと考えています。
他のシリーズ同様、気軽に楽しんでいただければ幸いです。

<第1回 ~ 錦の御旗 ~>

古から、日本の歴史における錦の御旗が持つ意味は、自分たちの後ろに国家の最高権威としての天皇や朝廷が存在している、すなわち、天皇や朝廷を擁する自分たちこそ正しい、という正当性の証です。

江戸末期においても錦の御旗は大きな意味を持ち、鳥羽伏見の戦いで薩長軍が天高く掲げた錦の御旗を一目見て、徳川方の総大将である徳川慶喜は一気に戦意を喪失した、といわれています。

実際に慶喜の心の中で何が起きていたかは、今となっては知る術もありません。
ただ、「朝廷に弓を引く逆賊には決してなれない。もしそうなってしまったら、自分がこの世に存在している価値はない」という強烈な思い込みに思考を乗っ取られ、本来持っている自分の可能性を制限し、その後、反応的に行動してしまった、とする見方を私は否定できません。

ここで慶喜の行動を評価することが、この記事の目的ではありません。
私が着目している点は、それまでに培ってきた価値観や思い込みが、ここでは薩長軍が錦の御旗を掲げるという想定外の出来事を引き金にして、一気に人間を思考停止状態に巻き込んでいく、という点です。
慶喜という、当時の最高水準のリーダー教育を受けていた優れた存在をもってしても、それは起こりうるのです。

さらにここで着目したいことは、実際に戦場で掲げられた3本の錦の御旗は、朝廷から薩長が正式に下賜されたものではなく、長州藩が模倣して作ったものだったというエピソードです。

その真偽はさておき、もしそうだったとしたら、その時点での天皇や朝廷の率直な意向がどこにあったのかは客観的には誰にも分らないわけで、その時点で薩長と互角以上の戦力を有していた慶喜には、自らの価値観を損なうことなく目の前の現実により主体的に関与し、別の未来を創造するという選択肢が残されていたはずです。

もちろん、歴史を語る上では、1人の人間の力では如何ともしがたい時流の力も無視できません。
従って、慶喜が別の可能性を持っていたはず、というその点で彼を批判する意図は全くなく、逆に、彼が担った歴史上の大きな役割に対する深い敬意と、人間としての共感を、ここに表します。

さて、翻って、現代に生きる私たちのことです。
時代と環境は違うとはいえ、その志を受け容れ、ひたむきに人生を生きているという点では、私たちも同じリーダーです。
今に生きる自分にとっての錦の御旗は、いったい何なのでしょうか。

少し脱線して正直に告白しますが、私自身が思考停止に陥る引き金の1つは、自分にとって理不尽と感じる非難です。
主体的に生きていれば、周囲からの何がしかの批判や非難を受けることは当たり前と頭では理解していますが、その非難があるレベルを超えると、一気に思考停止状態に突入し、その人との関係を遮断する傾向が私にはあります。

その奥にある私の思い込みは、「自分はとても繊細で、すぐに深く傷ついてしまう。だから自分を深く傷つける存在とは離れていないと生きていけない」というものです。
この思い込みが自覚できてからは、このパターンでの思考停止の発生確率は下がってきているように自分では感じていますが、慶喜と比べると、そもそものレベルが低いですね(笑)。

さて、話を錦の御旗に戻しましょう。
幸い、私には、弊社のミッション、
「意識の進化を呼び覚まし、人やシステムが本来持っている可能性が拓かれた幸せな未来を創ります。」
があります。
仕事の文脈では、これが今の私の錦の御旗です。
会社のミッションが自分事になっていることに感謝を感じます。

この錦の御旗を、自分たちの可能性を制限する方向に使うのではなく、まさにその言葉どおり、自分たちの可能性を拓く方向で活用していきたいと考えています。

少し長くなってしまいました。
最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました。

 

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ウエイクアップの物語

株式会社ウエイクアップ
代表取締役社長 島村剛41

「人間誰しも、自分がしたいことに取り組んでいるときが最も幸せで、生産性が高い」

2008年早春、CTIジャパンが出版した「コーチング・バイブル第2版」によせた巻頭文の言葉です。
今もその想いに変わりはありません。
私たちにとっての仕事とは、自分を殺すことではなく、その本来の姿を存分に活かすことだ、という想いを、社会人としての30年余の経験を経て、今も自らのビジネスの現場で育み続けています。

株式会社ウエイクアップの前身、株式会社シーティーアイ・ジャパン(CTIジャパン)に私が参画した2004年4月から現在まで、この組織の代表取締役社長の役割を担ってきました。
正直に告白しますと、所謂、社長という役割に相応しい性格的適性を、私は持ち合わせていません(笑)。
そんな私がこの大役を永きにわたって務めている理由を私自身の内面に求めるとすれば、2000年の創業以来、CTIジャパンが提唱し続けている「コーアクティブ・コーチング(*)」(=人が本来持っている可能性に焦点を当てたコミュニケーションで本領発揮を促すアプローチ)が大好き、という想いです。
もちろん、2008年に事業展開を開始したCRRジャパンのシステム・コーチング(*)(=意図的で意識的な関係性の構築によってチームや組織をエンパワーする生命論的な組織開発)や、2010年に立ち上げたTLCジャパンによる、クリエイティブなリーダーシップを発揮する(=無自覚な思い込みに気づき、より大きな目的のために自分の価値観やリソースを存分に活用する)機会の提供についても、それぞれ大好きで、その可能性を信じてやまない私がいます。
皆様とウエイクアップのご縁は、この15年の間のどのタイミングだったのでしょうか。
その有難いご縁に心から感謝しています。

(* コーアクティブ・コーチング および システム・コーチングは登録商標です)

 

今日から始まった「ウエイクアップ・リーダーズ・マガジン」では、CTI、CRR、TLCという、3つの世界標準ブランドの智慧を、実践的な文脈、もしくは従来とは違った切り口で編集して皆様にお伝えし、ビジネスの現場でこれらの智慧を皆様に活用していただくことを目的としています。
そして、そのメールマガジンのラインナップの1つである、この「ウエイクアップの物語」では、株式会社としてのウエイクアップが、この15年の間、実際にビジネスの現場で日々取り組んでいることを、できるだけ率直に皆様にご紹介していきます。
予め申し上げておきたいことは、ウエイクアップの取組みは現在進行形であり、成功や失敗という結果の評価をできる段階では未だありません。
さらに踏み込んで正直に申し上げれば、どちらかというと、日々、舞台裏はたいへんです(笑)。
ただ、会社経営や組織運営といったビジネス現場の在り方や常識を、さらによりよいものに進化させていくことを志すビジネスリーダーの皆様にとって、3つのブランドの智慧の実践と体現を目指す私たちの取組みは、きっと参考にしていただけると考えています。
「ウエイクアップの物語」を、皆様のビジネス現場における組織開発やリーダーシップ開発に活用していただければ誠に幸いです。

3つのブランドは、それぞれのタイミングで株式会社を設立して事業展開して参りましたが、各事業のシナジーの発揮を意図し、昨年10月1日に各社を統合し、改めて、新生、株式会社ウエイクアップとして船出しています。
ですので、本日2015年10月1日は、統合1周年の記念日なのです。

 

統合後の株式会社ウエイクアップは、CTIジャパン、CRRジャパン、TLCジャパンという3つのブランドを、2つの文脈で事業展開しています。
1つは、これらのブランドの智慧の実践者を育成、輩出するラーニング事業、もう1つは、その実践者達との協働によるウエイクアップらしいリーダーシップ開発や組織開発の機会をB2Bでお届けするコラボレーション事業です。
いずれも「意識の進化を呼び覚まし、人やシステムが本来持っている可能性が拓かれた幸せな未来を創る」というウエイクアップのミッションのもとで事業展開しています。

ウエイクアップが元気に生き生きと活動できていることの原動力は、自分達が伝えている智慧が大好きで、その可能性を信じる想いや志、そしてその実践と体現が響き合うことで育まれ続けている‘熱’です。
これからお伝えしていく「ウエイクアップの物語」は、私たちがどのように、その‘熱’を育み続けているのか、の物語です。
次号以降も、ぜひ、気軽にお楽しみください。

今日からスタートした「ウエイクアップ・リーダーズ・マガジン」は、今回楽しんでいただいた「ウエイクアップの物語」に加え、以下のラインナップを準備中です。

「ビジネスコーアクティブ会話術」
「歴史に学ぶ日本的なシステムとリーダーシップ」
「生きている会議の創り方、進め方」

皆様のご感想などございましたら、お気軽に以下のアドレスにお寄せください。
magazine@wakeup-group.com

返信はむつかしいかもしれませんが、必ず拝読させていただきます。
次号以降も楽しみにしていただければ幸いです。
最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました。

株式会社ウエイクアップ
代表取締役社長 島村剛