リーダーズマガジン

「歴史に学ぶ日本的なシステムとリーダーシップ」 第3回 ~ もしあなたが真田昌幸だったら ~

年が明けて、大河ドラマも新シリーズが始まりました。
武田信玄という偉大な父親の背中を追い続けた武田勝頼や、父親に絶対的な信頼を寄せる真田家の一族の姿が活き活きと描かれています。

家(いえ)というシステムが絶対的な存在だった時代の中で、父親が発揮するリーダーシップの質が、その家の命運を左右する決定的な要因であったのでしょう。

そして、こうした歴史的な経緯が、リーダーシップの所在を父性に求めるという、これまでの私たちの1つの常識を創ってきたことも、否めないように感じます。

それが父親であろうと、お殿様であろうと、誰か1人のリーダーに組織の命運を託すというシステムは、指示命令、管理や統制という文脈において、その強みを発揮します。
特に、物質的な豊かさを求めて覇を競い合っていた戦国時代には、最も適したシステムだったのでしょう。

一方で、私たちが今、そしてこれからの時代をよりよく生きるためには、このようにリーダーシップを一極に集中させるシステムに限界があることを感じていらっしゃる方も多いと思います。

では、今、そしてこれからの時代に求められるシステムにおけるリーダーシップとは、どのようなものなのでしょうか。

それは、そのシステムが身を置く環境によって、リーダーシップの在り方を、自在に、かつ自律的にデザインできるシステムだと考えています。

その実現のためには、一極集中型の対極として、リーダーシップが偏在する、つまり、誰か1人だけがリーダーなのではなく、組織に所属する全員がリーダーである、というシステムに身を置く術を、今、そしてこれからを生きる私たちは体得しておく必要があります。

その在り方に向けての移行期間において、私たちが今すぐできることは、よく言われることではありますが、私がこの家の父親だとしたら、或いは、この会社の社長だとしたら、という視点からの思索と行動を開始することだと思います。

ぜひ、ご自身の持ち場で、もし自分がその組織のトップだったら、この局面で何を意思決定するのかについて、想いを馳せてみてください。

そしてまた、もし自分が真田家の当主だとしたら、という視点で今年の大河ドラマを眺めてみると、今までと違った形でドラマを楽しめるかもしれませんね。

今回も最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました。

 

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チームが持続的に機能するための4つのポイント

「チームって何ですか?」

デジタル大辞泉によると、『ある目的のために協力して行動するグループ』とあります。

では、皆さんの組織・チームでは、目的・目標を達成させるためにお互いに協力し合う行動をとっていますか

時々企業の人事や経営企画の方から、

「“チーム”や“課”で1人ひとりは優秀で、自分の役割に一生懸命取り組んでいるけれども、協力している感じがしない」

強いリーダーシップを持った人がチームを引っ張ってうまくいっていても、その人が異動等で離れてしまうとチームが崩壊してしまう」

というご相談をいただきます。

こうしたケースは“誰が悪い”というわけではなく、その組織やチームの中で人と人との間に生まれる“関係性”に問題があるのではないでしょうか。
チームが持続的に機能するために必要な関係性について、4つのポイントを挙げてみます。

1.チームメンバー1人ひとりの意見を出せるオープンな場である

声の大きい人の意見に引っ張られ、それがチームの総意であるかのように決まってしまう時があります
しかし、実際は毎回全員の意見が同じというケースは多くはありません。
むしろ、異なる意見が出てくることが当たり前ではないでしょうか。

1人ひとりが様々な意見を自由に出せることで、チームに対する所属意識が高まり、また新しいアイデアや発想も生まれやすくなります。

2.チームメンバーが、「自分達は何を目指していて(目的・目標)、どんな存在なのか?」ということを認識している

決めた目的・目標に対して、チームとしてどんな価値を提供できるのか、1人ひとりがどんな存在で、チーム対する距離感や想いがどんな状態なのかがわからないこともあります。
そのため、チームの販売目標や行動目標は決まっていても、メンバーが腑に落ちていないことがあります。

地図を見て目的地や目標地点がわかっても、現在地がわからなければ道を進むことはできません。

まず自分達が何を目指し(目的・目標)、どんな存在なのかを知っておくことがとても大切です。

3.意見を出し合い戦わせながら、お互いを尊重し協働関係を創る

チームメンバーが相乗効果を発揮してチームの目標に向かっていくためには、協働関係を創ることが大事です。
しかし、ややもすると、意見の対立を避けてしまうケースが見られます。
私自身、自分の意見に反対されることはあまり好きではありません。
では、どうすればいいのでしょうか。

まずは、反対意見であっても相手の意見をしっかり受け止め、その意見の良いところを見つけることが重要です。
そして、相手の意見に敬意を払いつつも、自分の意見を表明していく。
これが、協働関係を創るコツなのです。

4.不満や愚痴を肯定的にとらえ、チームのエネルギーに変えていく

「不満は口にするな!ポジティブにいこう!!」と、ポジティブを強要する人が時々います。
しかし、不満や愚痴は、その人がチームに対して願っている状態が達成されていないから出てくるものであり、「自分が理想とする姿を達成させたい!」というエネルギーでもあります。

不満や愚痴の奥にある、人の願いや思いを聴いてみると、チームの関係性が肯定的なエネルギーに変わっていくことがよくあります。

この4つのポイントは、組織の「関係性」にフォーカスしたもので、これだけで良い結果が出るわけではありません。
しかしこの4つがあれば、メンバーがお互いに自立し、イキイキとした持続可能なチームを築いていくことが可能になるのではないでしょうか。

ぜひこの4つのポイントから、ご自身のチームを振り返ってみてください。

 

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新年特別号『英雄の始動』~ 2016年、来る年に想う ~」

明けましておめでとうございます。
今年も、ウエイクアップ・リーダーズ・マガジンをよろしくお願い致します。

さて、前回の年末特別号で、

「あなたの使命は何ですか?
ヒーローには必ず使命があるものです。」

と、問いかけさせていただきました。

この年末年始、私自身も機会あるたびにこの問いを話題にしてみて気づいたことは、皆「ヒーロー=英雄」が大好きだ、ということです。

世代毎にそれぞれの英雄がいますが、逆境やチャレンジに立ち向かう英雄たちを応援しながら子供心を昂らせた体験は、今でも活き活きとした楽しい思い出です。

一方で使命に話題を転じると、日常的に自らの使命に想いを馳せている人たちならともかく、一般的には、きっちりとしたセットアップをしないと、その場はまったく盛り上がりません(笑)。

それは何故なのか?

私なりに経験を振り返ってわかったことは、一般的に、使命は無力感と隣り合わせに存在するからです。
その無力感とは、自分が逆境やチャレンジに立ち向かうことを想像した時、自分の内面に自然に沸き起こるものです。

では、私たちは、この無力感にどう対処していけばいいのでしょうか。

これは自然に沸き起こってしまうものなので、無理に観ないようにするよりも、「この無力感、あって当然だよね」と、その存在を認めてあげ、その上でそっと脇においてあげるといいようです。
そうすると、その無力感に自分の全てを乗っ取られることを防ぐことができます

そして、改めて、

「自分の命を何に使うのか?
何に使われたら自分の命が輝くのか?」

について、自らに問い続けることが大切です。

日々のそうした在り方が、あなたの中の英雄を育んでいきます。
あなたの身近にコーチがいるのであれば、このテーマでコーチングを依頼するのもとても有効だと思います。

そして、新たな年を迎えたこのタイミングです。
まずはこの1年、自分の命を何に使うのかについて、肚を決めましょう。
そして、そのための行動を開始しましょう。

ここで最も大切なことは、小さな1歩でもいいから、その行動を開始することです。

起動スイッチを押して、あなたの中の英雄を始動させてください。
あなたの中の英雄を待っている人や応援してくれる人が、あなたの持ち場にきっといるはずです。
英雄には、必ず仲間が現れるのですから。

この1年が、皆さまにとって素晴らしい1年になることを祈念しています。

今回も最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました。

 

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年末特別号「肚落ち」 ~ 2015年 往く年を想う ~

メリークリスマス!
目には色鮮やかなイルミネーション、
耳には昔懐かしいクリスマスソング、
寒さと暖かさに戸惑いつつの2015年のクリスマス・イブ、
皆さまはいかがお過ごしでしょうか。

今回と年始の2回は、いつもの連載シリーズから離れて、特別号としてお送りします。
いつも通り、ほんのひととき息を抜いて、気軽にお付き合いください。

さて、2015年もあと1週間となりました。
あなたにとって、今年はどんな1年でしたか?

私の今年は、「肚落ち」に向き合った1年でした。

コーチとしては、お客様のエグゼクティブ・チームとの数々のシステム・コーチングセッションを通じて、チームメンバー全員が「肚落ち」できる戦略やビジョン、キャッチフレーズを参加者全員で握り、そこからチームとして、一貫性のある行動に一歩を踏み出すお手伝いをさせていただきました

それぞれ、いい意味で一筋縄ではいきませんでしたが、素晴らしい方々とご一緒させていただきましたことを、心から感謝しています。

想えば、そもそもコーチングとは、クライアントの頭の中を猛スピードで駆け巡る数多の考えや思いが「肚落ち」して、本来のその人らしい、肚からの行動を開始し継続するためのお手伝い、と言えるのかもしれません。

経営者としては、弊社関係者一同で「肚落ち」できるウエイクアップのミッション創りに仲間たちと取組み、一定の成果を得ることができました。
一方で、それぞれ価値観の違う関係者全員の「肚落ち」を大切にしながら1つ1つの事業を推進し、局面を打開するチャレンジに、今この瞬間も直面しています。

今年は、私にとって社会人生活30年の節目の年でしたが、未だ未だ修行の身、との想いを新たにしています。
こういう時こそ、自分と自分たちの可能性を信じて、こうした成長の機会に恵まれたこと、そして仲間たちに感謝しながら、今の自分の最良を、1つずつ実行していこうと考えています。

私のことが長くなってしまいました。

あなたの2015年は、どんな1年でしたか?
今年、あなたが向きあったのは、いったいどんなことだったのでしょうか。

お忙しい皆さまのこと、ほんの5分でもいいと思います。
可能であれば、お1人の時間を確保して、往く年2015年に想いを馳せる時間をとってみてください。
きっと、あなたにとって大切な5分間になると思います。

そして、来る年2016年に向けて、設問を1つ。

「あなたの使命は何ですか?」

この問いを、ご自身の内面に問いかけてみてください。
ヒーローには、必ず使命があるのです。

そして、もし可能であれば、ご家族やお友達とできるだけ賑やかに、酒の肴として、それぞれの使命を気軽に話題にしてみることをお勧めします。

今回も最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。
皆さまにご愛読いただいていること、心より感謝しています。

ステキなクリスマス、そしてお正月をお過ごしください。
ありがとうございました。

 

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コーチング研修を研修で終わらせない4つのヒント

企業におけるコーチング研修は、一般的なものになってきています。

ウエイクアップも多くの企業にコーチング研修をお届けしており、有り難いことに非常に高い評価を頂戴しています。

一方で、必ずと言っていいほど、毎回聞こえてくる声があります。

「実際にやるのは、なかなか難しいよなぁ」

「学ぶ」と「できる」には大きな隔たりがあり、だからこそウエイクアップのプログラムは「体験学習」スタイルでお届けしていますが、それでも上記のような声が完全に消えることはなさそうです。

では、どうすれば「学ぶ」と「できる」のギャップを少しでも埋められるのでしょうか?
私自身、企業内コーチとして長い間活動し、組織開発コンサルタントとして多くの企業に導入のお手伝いをしてきた経験も踏まえ、コツをいくつかご紹介します。

1.学んだ後、使うシーンを特定する

一番もったいない投資は、研修を研修で終わらせてしまうことです。
そのためには、学んだことを使うシーンをできるだけ具体的に特定しましょう。
部下を持つ方であれば目標面談など、部下がいない方はミーティングなどを想定するといいでしょう。

2.コーチングスキルを使うことを強く意識する

せっかく使うシーンを決めても、新しく学んだことを実践するには「使うぞ」という意識のセットをしないと、ついついいつもの会話になってしまいます。
学んだコーチングスキルの中で、特にどれを使うかを決めるのも効果的でしょう。

3.ひたすら使ってみる

コーチングのスキルを身につける1つのポイントは、

「とにかく使ってみること」です。

例えて言うなら、初めて自転車に乗るようなものです。
おそらくその時は最初から上手にやろうと思わず、ただ失敗と挑戦を繰り返したはずです。
コーチングも同様。
回数・時間をこなせば、必ずできるようになります!

4.仲間を見つける

とはいえ、難しさを感じたり、挫けたりすることもあるでしょう。
でもご心配なく。
あなたの近くには、既に一緒に学んだコーチ仲間がいるはずです。
その仲間達とコーチングの練習をしたり、各自の取り組みを共有したり、相談してみるのもいいと思います。

いかがでしょうか?
いずれも意外性がなく、驚かなかった方もいらっしゃると思います。
しかし、当たり前に思われることを当たり前にやることが、実は大事なんです。

コーチングに興味を持ち、可能性を感じた方はぜひ参考にしてください。

 

 

 

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コーアクティブ・ビジネス会話術 「部下に強み・持ち味を伝える3つのポイント」

もし、自分の上司や先輩に自分の強みや持ち味を伝えられたら、どんな気持ちがするでしょう?

おそらく、悪い気持ちにはならないと思います。

この人は、自分のことを理解してくれる、しっかり見てくれる人だという印象になるのではないでしょうか。

コーアクティブ・コーチングでは、コーチングの中で、

「相手の価値観(本人が大切にしていること)を聴き取り、それを言葉にして伝える」

ということを行いますが、部下との会話の中でも、モチベーションアップや信頼関係を強める会話として応用できます。

部下の強みや持ち味を伝えるポイントは、以下の3つです。

1. 実際の仕事の良い成果(事実)や強みを伝える

ここでのポイントは、「言葉にして伝える」ということです。
実際に言葉で伝えられることによって、伝えられた側は実感値が高まっていき、さらにモチベーションがあがっていきます。

例: 「橋元君は、最近のアンケートで、受講生からわかりやすいという評価が多くなっているね。いつも事前準備をしっかりやっているから、結果となって出てきているのだろうね」
2. 部下の価値観を伝える

部下の仕事をよく見ていると、部下が何を大事にして仕事をしているかがわかってきます。
自分自身が大事に思っている価値観を言葉にして伝えられるということは、それだけでも嬉しくなりますが、自分のことを見てくれている、知ってくれているという信頼感の醸成にもなります。

例: 「橋元君の研修を見ていると、受講生との‘つながり’をとても大事にしていると感じるよ」
3. 伝える時の意識

伝える時に、心がこもっていない言葉は、どれだけ良い内容の話をしても伝わりません。

「本音で相手の強み・持ち味を伝える」

これがポイントです。
実際のビジネス会話術の研修では、受講生一人一人に、「誇れる仕事」を語ってもらいます。
自分自身が誇れると思う仕事の中には、その人のこだわりや、何を大事に思って仕事をしているのかが入っています。

もし面談などで、部下とじっくり話す機会があったら、今年の「誇れる仕事」を聴いてみてください。
その話を聴きながら、価値観を直接伝えてみてください。
そして、この会話術には、大きな副産物があります。

それは、相手の強み・持ち味を伝えている自分自身への影響です。
部下の強みや持ち味を伝える時に、おそらく自分自身の心が温かくなるのを感じることができます。

そうです。
この会話術は、伝えている自分自身も元気が出てくる会話手法でもあるのです。

部下のモチベーションアップや信頼関係を強めるだけではなく、ぜひ自分自身のためにも使ってみてください。

 

 

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「歴史に学ぶ日本的なシステムとリーダーシップ」 第2回 ~ 家訓(かきん) 後世に託す想い ~

今日は、歴史に学ぶシリーズの第2号です。

今号では、江戸時代から明治維新にかけての会津藩の物語で、藩祖・保科正之が家訓(かきん)として遺した将軍家への忠義の想いが、200年の時を超え幕末の会津藩主・松平容保の「京都守護職を引き受ける」という重大な意思決定に大きく影響した、とされている物語に注目します。

幕末、結果として極めて不本意な形で賊軍の汚名を着せられた会津藩のその後を想う時、当時の意思決定に対する賛否には意見が分かれるところかもしれません。

ただ、ここで私が着目しているのは、その意思決定の良し悪しではなく、1人の人間の想いが録音や録画技術のない時代の中でも、200年の時を超えて活き活きと生き続けていた、という点です。

この物語は、何らかの条件が整えば、ある1人の人間が「これが大切だ」と信じたことを、時代を超えて後世の人から人へと伝え遺していくことができる、という可能性を私たちに示してくれています。

このことの背景には、想いを発した人物の社会的地位はもちろんのこと、その人物が果たした役割や貢献の大きさ、さらには人徳などの要因があるでしょう。

しかし、より重要なことは、その想いそのものが、先に連なる時代に生きる人達にとっても「確かに大切だ」と実感できる内容であることです。

会津藩で伝承されたことは、主君に対する忠義の精神という、当時の根本的な価値基準であり、この日本という国で古くから育まれてきた、人としての大切な在り方の1つであったことも無視できないと感じます。

そして、だからこそ、会津藩という忠義に生きたシステムが、現代に生きる私たちの心の中に、今も変わらず鮮烈な印象と共感をもたらしてくれているのだと感じます。

今なお、会津の地や、その縁の方々の中に、会津藩の魂が生き続けていることに、心からの敬意を表したいと思います。

さて、現代に生きる私たちが後世に託す想いは、いったいどんなものなのでしょうか。
それは、いつか己の人生を全うする時に、それぞれの胸に去来するものなのかもしれません。

一方で、いつ私たちの命が尽きるのかについては、私たちには知る由がないことも事実なので、改めて、今の自分が後世に託す想いは何か?を問うてみました。

その自問に対する私の答えは、

「人やシステムの可能性を信じる。
そして、自分の可能性も、信じる。」

という想いです。

こうして言葉にして気づくのは、自分が後世に託したいことは、今を懸命に生きている自分へのメッセージそのままであったことです。

もしかしたら、保科正之も、忠義の精神を誰のためでもない、自分自身のために言い聞かせ、その生を、その瞬間を、懸命に生きていたのかもしれません。

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

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「リーダー育成とコーチング」 ~ コーチングって、役立つの? ~

これまで長年にわたって、企業の主にリーダー/マネジャー層を対象としたリーダーシップ開発に携わってきました。
その中で、「プレーヤーとしては優秀なのに、リーダーとしてはイマイチ、マネジメントはうまくない」という課題に出会うことが多くあります。

ではいったい、優秀なプレーヤーが優れたリーダーへと成長を遂げるには何が必要なのでしょうか。

私は、意識の変化、つまり、今までのやり方で「通用すること」と「通用しないこと」に気づき、新しい方法に踏み出すこと、

“一馬力の限界に気づき、そこから脱皮する”

ことが、とても大切なことの一つだと考えています。

ところで、「リーダーとは何でしょう?」
様々な定義がありますが、とてもシンプルに言えば、リーダーとは、

“共に力を合わせていける、互いの力を出し切っていける環境・状況をつくれる人”

だと私は思います。

それでは、このような意識の変化はどのようにして起こるのでしょうか。
リーダー育成のための施策、アプローチは多々ありますが、中でもコーチングはとても有効な関わりだと感じています。

コーチングの大きな目的の1つに、

「自分の思考行動パターンに気づき、自覚的に行動を選択できるようになること」

があります。
例えば、多くのタスクを抱えて仕事をしていることをイメージしてみてください。
そのような状況の中、「忙しいのは(負担が大きいのは)当たり前、しんどいけれど仕事はそういうものだから…」と、そのままの状況を無抵抗に受け入れていることはありませんか?

自覚的な行動の選択とは、その状況を受け入れる前に、「どうしてこんなにも忙しいのだろう?」「どうしてうまくいかないのだろう?」ということに、しっかりと向き合うことから始まります。

ここで、あるリーダーの事例をご紹介します。
その方は、結果を達成するという目標のために、自分自身が多くの仕事を抱え込んでしまって忙しくなり、部下の指導や成長に割く時間がないという状況に陥っていました。

本当は、部下が成長するほうが良い結果を達成することはわかっているのに、経験も豊富で一番優秀なプレーヤーである自分が多くの行動をしていました。
でも、それは自分が本当に望んでいたリーダーの姿ではなかったのです。
そこから、私とのコーチングの中で「どうしてこんなにも忙しいのだろう?」「どうしてうまくいかないのだろう?」ということに、しっかりと向き合うことになりました。

自分の思考行動パターンを振り返った結果、1つの気づきが生まれました。
それは、「自分が責任を背負い込みすぎている状態は、メンバーの成長や活躍の機会を奪っている」という気づきでした。
その気づきを得てから、その方の行動が変化していきました。

リーダーがメンバーに荷を分け与え、サポーターに回るようになると、知恵の受け渡しが始まります。
私はその方とのコーチングの中で

「部下を育てたければ、今の自分のど真ん中の仕事、これだけは絶対に渡せないと思うものを渡したらどうでしょう。」

と提案したことがあります。
そうしないと、部下の意識や仕事のステージが上がりませんし、雑用やリスクのない仕事をたくさんさせても部下が大きく育つことはありません。

ただし、これは丸投げとは違います。
重要な仕事を部下に任せたところから、リーダーは部下のサポーターに回るというとても大切な役割が発生し、そしてここには、リーダーにとっての怖れも当然存在します。

任せた仕事が失敗する恐れ、手放すことの怖さ、新しい行動に踏み出す不安、プレーヤーからリーダーに役割がシフトしていく中ではこのような感情が起きてきます。

だからこそリーダーは、自分はどんなリーダーなのか、リーダーとしてどうありたいのかを忘れないようにすることが大事だと思うのです。
また同時に、部下と伴走するサポーターやコーチとしての役割は、今後のリーダーに必須の役割でもあります。
一馬力で疾走するリーダーから、周りを生かす何馬力ものリーダーへ。
リーダーの進化のために、もっともっと組織でコーチングが使われていくことを願っています。

 

 

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「生きている会議の創り方、進め方」 第2号 ~ 会議の雰囲気を意図的に創る ~

その会議の目的を確認した上で会議を始めることの大切さを、前回の第1号でお伝えしました。
今日の第2号では、「会議の雰囲気を意図的に創る」をお伝えします。

皆様もこれまでたくさんの会議に出席してこられたと思いますが、それぞれに、さまざまな雰囲気があったことと思います。

ある会議は‘活き活き’とした雰囲気だったかもしれませんし、また別の会議は‘真剣な’雰囲気、さらにまた別の会議は‘和やか’な雰囲気だったかもしれません。
或いは、恐怖のあまり‘生きた心地がしない’会議もあったかもしれません。

会議の雰囲気は、その内容や主催者の態度や進行の巧拙、発言者の発表内容、参加者の感情など、いくつかの要因が重なった成り行きとして偶発的に現れるものととらえることが一般的ですが、

実は会議の雰囲気は意図的に創ることができます。

その会議の目的を達成するために必要な雰囲気は、自分達で意図的に創ることができるのです。

具体的な方法は簡単です。
まず主催者が、

「この会議の目的を達成するために、私はこの会議をこんな雰囲気で進めたい」

という意図を全体に表明します。
次に、

「この会議の目的を達成するために、あなたはこの会議をどんな雰囲気で進めたいですか?」

と参加者全員に問いかけ、1人一言で発言してもらいます。

可能な限り、全員の発言を求めたほうが効果的です。
参加人数の都合等でそれが叶わない場合は、参加者を2人ないし3人組に分ける形で、自分が創りたい雰囲気を全員が言葉にして発言する時間をとるといいでしょう。

そして、主催者並びに参加者全員が意図する雰囲気を、参加者全員の目に入る場所に書き出します。
ここで全員の答えをまとめる必要はありません。
ただ、それらを1つずつ読み上げる形で、再確認します。
手順はこれだけです。
ぜひ、今日から皆様も試してみてください。

少しだけ解説させていただくと、目的の達成のために参加者全員で力を合わせるにあたり、どんな雰囲気ならばそれがより容易に実現できるのかということを、私たちの無意識や体感覚は既にその答えを知っています。

ところが、一般には、その答えを言葉にして意識化し意図する機会のないまま会議が始まりますので、いつもどおりの言動パターンの結果として生まれてくる雰囲気で、会議が進んでいくことがほとんどです。

その結果として生まれる雰囲気が、会議の目的の達成に資するものであれば問題はないのですが、もし、会議の目的から見てその雰囲気が逆効果なのであれば、リーダーであるあなたは、会議の雰囲気を全員で意図的に創ることにチャレンジしてみてください。

私たち人間はとてもよくできたシステムで、目的が設定されると、その達成に向けて、意識や無意識が作動し始めます。
無意識がセンスしてくれた目的達成に資する雰囲気を、自分の意図として発言することでその会議への当事者意識も強まりますし、それが、会議という生き物が息を吹き返すきっかけを創るのです。

皆様も、会議という生き物の雰囲気を意図的に創ることを、今日から楽しんでみてください。

今回も最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。

 

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「ウエイクアップの物語」 第2号 NCRW

コーアクティブ・コーチング(※)の礎の1つがNCRWです。

NCRWとは、

”People are naturally creative, resourceful, and whole.”

という英文の中の単語の頭文字をとったものです。

CTIジャパン創業当初は、「クライアントはもともと完全な存在であり、自ら答えを見つける力を持っている」と意訳してお伝えしていました。

現在は日本語では「人はもともと創造力と才知にあふれ、欠けるところのない存在である」と訳しています。

(* コーアクティブ・コーチング は登録商標です)

 

NCRWは、「ウエイクアップの物語」という文脈においても、最も基本的かつ大切な要素です。

「ワークショップでお伝えしているNCRWをお客様との実務的なやりとりの中はもちろん、オフィス内で体現することが大切だよね」と、当時ほんの数名だったスタッフと夜遅くまで熱く語り合っていたことを、昨日のことのように思い出します。

 

そこには、所謂「医者の不養生」にならないよう、知行合一の一貫性を持って事業を展開したい、という私たちの願いがあり、今も変わらず、そこに熱があります。

同時に、NCRWがビジネスの現場で当たり前になることが必要だ、という想いもあります。

これは私のコーチとしての経験からですが、「答えを見つける力を持っているのは上司である自分だけだ」、というNCRWとは真逆の人間観で仕事を進めていくリスクの大きさは、多くの方々が頭では理解しています。

また、あなた自身はどんな上司と仕事をしたいですか?と問いかければ、

「この人は自ら答えを見つける力がない」

という視点を持つ上司ではなく、

「この人は自ら答えを見つける力を持っている」

というNCRWの人間観で協働できる上司を多くの方が求めています。

読者の皆様も、きっとそういった上司を求めていますよね。

 

ところが、何らかの原因で、結果として、自分の部下には自ら答えを見つける力がない、というスタンスで部下と接してしまい、結果として無用の苦労をしている方が未だに多いと感じています。

 

ちょっと脱線しますが、電子が粒か波かを測定する実験において、測定者が電子は粒だと思って測定すると粒の結果になり、電子は波だと思って測定すると波の結果になる、という話を聞いたことがある方もいらっしゃるかと思います。

 

人間も電子と同じで、目の前の部下のことを、自ら答えを見つける力を持っていると観て接すれば、部下は自ら答えを見つけますし、逆に、この部下は自ら答えを見つける力がないと観て接すれば、そのとおりになります。

 

もちろん緊急事態などの例外はあるにせよ、基本的なスタンスとして「目の前のこの人は自ら答えを見つける力を持っている」という互いの人間観の中で協働することが、人やシステムが本来持っている可能性を拓くためには必要だと考えています。

 

話をウエイクアップに戻しましょう。

基本的な人間観としてのNCRWは、ウエイクアップ関係者の中では定着しています。

そのことは、お互いの本領発揮を促し合いながらの協働を育む土壌という、有難い内部環境をもたらしています。

結果として、権限委譲が進むこともNCRWがもたらすギフトの1つでしょう。

 

一方で、NCRWは全ての経営課題を解決してくれるものではありません。

より突っ込んで言えば、NCRWの人間観をもとに事業を展開していくなら、どうしても手当てしなくてはいけないことがあります。

それを一言でいえば、

 

「意図的な協働関係創り」です。

 

コーチングの現場では当たり前の意図的な協働関係創りは、事業経営の文脈でも必須のプロセスでした。

NCRWで互いに関わるということは、自分と相手、それぞれが互いの当事者意識を育み、「私はこうしたい」という意思を持つことにつながります。

それぞれの「こうしたい」が出そろったところで、組織としてはどうするのか、という次のステップがやってきます。

互いの意見が異なる時にどのように意思決定するのか、という予めの合意が必要ですし、さらに、何のために協働するのかという目的の確認も、意図的な協働関係創りには欠かせません。

 

組織運営における意図的な協働関係創りの大切さを、ウエイクアップは身をもって体験してきました。

次号以降で、そのことに触れていきます。

今回も最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました。

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