「カオスを超えて、本質へ」~パーパスと私~ Vol.13

ウエイクアップの中島尚毅です。
普段はCTI JAPANの上級コーストレーナーや法人営業を担当しています。

「カオスを超えて、本質へ」。このパーパスを初めて聞いたとき、胸の奥がじんわりと熱くなりました。それは、かつて自分が味わった「混沌の渦中」から抜け出し、ようやく自分らしいリーダーシップのあり方にたどり着いた過去の経験と深く重なったからです。

2013年、前職の損害保険会社で私は初めて拠点長として地方の営業拠点を任されました。昇格の喜びとともに、「結果を出さねば」「会社の期待に応えねば」と、肩に力が入りまくっていた頃です。

私は理想を高く掲げ、「一枚岩の強い組織をつくろう」と熱量全開で走り出しました。メンバーの経験や状況に関わらず、「みんな、ここまで上がれるはず」と鼓舞し続ける日々。幸い、初年度は業績も突出し、自分なりに手応えを感じていました。

しかし、目に見える成果の裏で、組織の中には見えない軋みが生まれていたのです。翌年、会社の合併により別の拠点と統合され、組織が倍の規模になった時、それが一気に表面化しました。

「やっぱり、前の会社出身の部下の方がかわいいんですね」——ある日、統合先から加わった社員に泣きながら言われたこの言葉は、まさに私にとっての“カオス”の象徴でした。私は、全員を公平に扱ってきたつもりでした。でも、現場では「つもり」では伝わらない。背景の違いや不安に寄り添わず、一方的な「フラットさ」で通そうとしていた自分の未熟さに愕然としました。

その後、信頼を築くために対話の質と量を根本から見直し、「自分が語る」から「部下の声を聴く」マネジメントへと、大きく舵を切りました。苦しかったのは、リーダーという役割を演じ続けることで、自分自身の本音や弱さを押し込めていたことです。でも、信頼は「100%自分自身でいる」ことなしには生まれない。そのことに気づき、自分の想いや迷いもさらけ出して関わるようにした時、ようやく人と人との関係が動き始めました。

今思えば、あの時の私は、「管理職とはこうあるべき」「トップだから強くあらねば」という思い込みに縛られていたのです。本質を見失い、カオスの中で空回りしていた状態でした。表面的な成果だけでは、組織の深層には届かない。それを痛感した体験でした。

今、Wake Upで法人営業やコーチトレーニングに携わるなかで、あの経験が日々の支えになっています。目の前の人や組織が複雑な状況や変化の波にのまれているとき、私はまず、その奥にある「本質」に目を向けようと心がけています。それは「何をすればいいか」ではなく、「本当に大切にしたいことは何か」を問い直すプロセスです。

かつての私がそうだったように、人は誰しも“正しくあろう”とするあまり、混乱を抱え、思い込みにとらわれることがあります。だからこそ、まずはその“カオス”を受け入れ、そこから本質を見出していくこと。その道のりに寄り添うことこそ、私のパーパスとのつながりであり、私が今ここにいる意味だと感じています。