「カオスを超えて、本質へ」〜パーパスと私〜 Vol.12

ウエイクアップの橋本博季(はっしー)です。

ネガティブ・ケイパビリティ
―答えの出ない事態に耐える力―

この数年で強く印象に残った本の一つです。

ネガティブ・ケイパビリティは詩人ジョン・キーツが19世紀に発見した概念で、簡単に言うと「すぐに答えを出そうとしない態度」と言えます。

即時の解決が不可能な、例えば地球温暖化のような複雑で長期的に取り組む必要がある問題が増える中、すぐに答えを出そうとしない態度の重要性が説かれています。これは一つの例ですが、身近な組織でもすぐに解決が難しい事象は増えているのではないでしょうか。

この本の中で「すぐに答えを出そうとしない態度」は人間の本能に反するものだとも述べられています。
脳は答えを出したがるため、宙ぶらりんな状況を得意としない特性があるのです。「要はこれ」と言いたくなる症候群。

組織というシステムも、曖昧なものを許してくれないことが多いと感じます。その結果答えを出せないものは排除されたり、なかったことにされたりする(ように見える)力が働くのも自然なことかもしれません。

この本を読んで、7年前にコーチング事業を運営するCTI JAPANでドラスティックな組織変更をした時の経験を思い出します。

簡単に言うとCTI JAPANの事業運営を行うチームを廃止。普通の会社で言えば事業部に責任者がいなくなるといったところでしょうか。
CTI JAPANに関わる全員が当事者意識を持ち意思決定をすることにチャレンジしたのです。良く言えば自立分散型組織です。

新体制に移行してすぐの頃に起きたことはこんな感じです。

会議で話し合いアイデアが出ます、そして毎回この繰り返し。

「これって誰が決めるの?」
「まず、どう決めていくかを話すところからだよね。」
「それ、どうやって決めよう?」
「……。」

進まないw。

フラストレーションは半端でなく「やはり事業運営を管理するチームはあったほうがいいのではないか」という声も出ました。とにかく答えの出ない状態は辛い、スッキリなんて程遠い状態の連続です。

ただ、こうした状況でもできることにベストを尽くしました。経験則などから「答え」を出すことをやめ、ある意味で「宙ぶらりん」な状態にとどまり続けました。以前のような体制には戻らない決意だけを握っていました。

今振り返るとこのカオスな状況にとどまり続けたことで進化したり視点が変わる体験をしました。何より全員が当事者として事業を進めるということを頭で理解するよりもはるかに確かな肌感覚とともに体験した実感があります。

この経験はまさにネガティブ・ケイパビリティを育んだと言えるかもしれません、僕らの組織の強みになったかもしれません。

ネガティブ・ケイパビリティは諦めることを意味していないと著者は強調しています。
そもそも、「ネガティブ」という言葉がついていながらも、実際にはとても前向きな態度なのです。この一見矛盾しているような言葉の不思議さや神秘的な感じはとても本質を表していると思います。

私たちは何かあるとすぐに「How(どうやるのか)」ばかり考えます。それはすでに答えがあることを前提にしているからこそ「どうやるのか?」と聞いてしまうのです。しかし、できない状態にとどまることも大切です。「効率化」という名のもとに本質を失ってしまうことは意外と多いのではないでしょうか。

これが私の「カオスを超えて、本質へ」の原体験。

でも正直に言います、もう一度同じ体験はできればしたくありませんw

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