Case

導入事例

リーダーシップの成長×組織の成長:
V字回復に導く三井化学の取り組み

三井化学株式会社 人事部 様

2014年、三井化学株式会社(以下、「三井化学」と表記)の人事部は、全社展開を見据えたコーチングプログラム導入のファーストステップとして、人事部自身を対象としたトライアルを1年を通じて実施されました。(2015年現在は他部門で展開中。)その経緯につき、事務局を担当された飯田正信さん及び森下忍さん(以下、敬称略)にうかがいました。
業界 化学
売上規模 1兆5,500億76百万円(連結・2015年3月期)
従業員規模 新14,363名(連結・2015年3月末)
事業内容 機能化学品、機能樹脂、基礎化学品、石油化、 学製品の製造・販売

※ 所属、役職は取材当時のものです。

中途半端なことはできない

人事部 人材開発グループ サブグループリーダー 飯田正信さん
ー 導入のきっかけや背景を教えてください。

飯田:
元々は、当社の業績が悪化している中で、V字回復に人事部が寄与する施策を創るという背景から始まりました。当時の担当役員からコーチングが有効であるというアドバイスを受け、貴社に相談したのがきっかけでした。

ー そこから人事部門へのプログラムに進まれたのは?

飯田:
10年ほど前にコーチング関連の施策を行った際には、明確な成果を得られないまま終わってしまいました。そもそも、人事部がその施策について十分理解して展開できていただろうか、という問題意識が残っていました。

他部署展開するなら、人事部がきちんと『腹落ち』して進めていくべきではないか。また、業績が悪化している中、中途半端なことはするべきではないし、仕事に直結しているテーマを設定して、自ら取り組むべきだろうとも考えていました。そういったことがこの企画の原点です。

森下:
全社展開の前に、人事部でトライアルを行い、検証するステップを踏んだことは正解でした。価値や有効性を見いだせないまま他部署へ展開することはできませんから。

因数分解、三本柱で進める

ー とはいえ、組織内での調整は簡単ではなかったでしょう。

飯田:
もちろんです。予算を使って自部門への施策をやる以上、しっかりとした説明をする必要がありました。そこで、V字回復のためにという大きな文脈を因数分解して、そこに貴社のプログラムを対応させ、三本柱として進めていきました。

1)リーダー支援のための1on1でのエグゼクティブコーチング※1
2)組織力開発のためのシステムコーチング®※2
3)ベースとしての関係性構築・対話スキルのためのコーアクティブ・コーチング®基礎コース※3
という位置付けで、その掛け算で業績につなげるというモデルを描きました。

森下:
『人の三井』という言葉のある当社は、左脳的な社員が多いものの、心の温かい人も多い。貴社の『人』重視のプログラム哲学は当社に響くだろうと思っていました。

※1 役員・部長職を対象とした、360°フィードバック(TLCの商品であるLCP)を基礎とした資格を有するプロコーチによる1対1の定期的なコーチング
※2 組織・チーム全体の関係性の向上を促し、自律自走するチーム作りを支援するコーチング。CRR Global Japanの登録商標です。
※3 コーチングの基礎スキルを学ぶための2.5日間のトレーニングプログラム

V字回復への人事部の施策の因数分解図(飯田氏作成)

健全なコンフリクト

人事部 人材開発グループ 森下忍さん
(CTI認定プロフェッショナル・コーアクティブ・コーチ)
ー それぞれのプログラムの成果はいかがでしたか。

森下:
まず、システムコーチング®の成果として、本音の議論ができるようになったと思います。ダイレクトなコミュニケーションが、必ずしも悪いことではないとわかり、時間がかからなくなりました。また、健全なコンフリクトはあっても良いということもわかり、本質的なことを本音で話すことが身についたと思います。

飯田:
あとは『横の連携』ですね。先日も、ある局面で『なんのためにシステムコーチング®をやったんだ!』という声が上がり、それぞれの気持ちをセットアップしてミーティングを再開しました。結果として30分もかからずに解決できました。必要に応じて自ら場を設定し、自分たちで解決していく、といった『自走できる組織』になりつつあると思います。

森下:
思考が変わり、視点転換も起こった。

組織内の対話の素地ができた

ー 取り組みの合間には自主的な取り組みもされたそうですね。

飯田:
コーアクティブ・コーチング®基礎コースがあったことで組織内に対話の素地ができたように思います。システムコーチング®のセッションの合間に、人事部の存在意義について事務局と有志メンバーがファシリテートし、6回ほどメンバーでディスカッションをしました。10年前にコーチングを導入した担当者からは、こうやって自分たちが体験して『腹落ち』していれば、全社への展開はもっと身のあるものになっただろうと言われました。

森下:
メンバーでのディスカッションの場では、サーベイで組織文化として露呈した『他者依存』という弱みについてもじっくり対話しました。

飯田:
現場のニーズにきちんと応えていくことは非常に大事ですが、人事に関する決定は重要ですから、軸を持って、公平な対応をする人事部でありたい。言うべき事は言う、『やましき沈黙』はしてはいけないと。過去の事例を考えながら、昼休みにNHKスペシャル『やましき沈黙』の映像をメンバーで見て、自分たちや人事部のあり方についてディスカッションしました。

プログラムの評価と今後の展開

ー ウエイクアップの関わりに対する感想を聞かせてください。

森下:
トライアルを進める上で、スケジュールを何度かセットしたものが組織内の事情で吹っ飛んでしまうことがありました。そんなときも忍耐強く私たちの想いや一緒に描いた絵を見続けてくれたのが当社担当の平川さんでした。私たちの弱音や愚痴を受け止めてくれ、いつもエンパワーしてくれた。そのおかげで、私たちは組織の変化を信じて行動を起こし続けることができました。平川さんの存在が私たちの支えになり、私たちは自分と仲間の可能性を信じて、変容の種をまき続けることができました。

飯田:
お互いに遠慮なく話ができ、しかも本音でぶつかることができたことは大きかったです。当社のコア・バリューに『OneTeam』というものがありますが、平川さんと貴社はそれを私たち事務局とともに体現してくれていたと思っています。

森下:
人が絡むことだけに、想定通りに進まないことがあると思います。どんな状況でも、共に受け止めてくれ、共に考えてくれたことに、とても感謝しています。

基礎コース終了後の人事部の様子

ー 現在は社内でどのような展開をお考えですか。

森下:
トライアル中には、プログラムの評価と共に他部署展開する際の候補部署についてもアンケートをとりました。アンケートで希望が多かったことから、R&D部門に、1on1コーチング、システムコーチング®、リレーションシップ・アジリティ®※4といったプログラムの導入を決めました。
目的は、14中計で当社が掲げている新事業・新製品創出戦略の実現です。R&D部門担当役員は1on1のコーチングを経験していたため、リーダーとしての自身の変化とその重要性を実感していたこともあり、人事部から積極的にプログラムの導入を提案し、決定することができました。

飯田:
人事部で『腹落ち』する体験ができ、その有効性が実感できました。この施策を通して、他部門の変化を支援し、そこから価値あるものが生み出され、業績の改善につながっていくことを大いに期待しています。

※部下やプロジェクトメンバーとの関係性に対する当事者意識を高め、「組織運営力」を高めるコーチングスキルを理解・体得する実践型トレーニングプログラム

取材日:2015年6月23日
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