絶対にやる! リーダーの熱量を劇的に上げた
システムコーチング®の効果に迫る
株式会社プライムポリマー 取締役 包材事業部長 酒葉純 様
聴き手: 株式会社ウエイクアップ 森川有理(システムコーチ / CRR ジャパン チーフ・ラーニング・オフィサー)
業界 | 化学 |
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売上規模 | 2560億円(2015年度) |
従業員規模 | 674人(2017年3月度) |
事業内容 | ポリプロピレン、ポリエチレンの製造・販売 |
※ システムコーチング®:チームに対して行うコーチング。メンバーが肚落ちできる共通の目的について合意し、その実現に向けた具体的な行動の実践を支援。
またそのプロセスを通じてチームの関係性の質を向上させていく。CRR Global Japan 合同会社の登録商標
※ 所属、役職は取材当時のものです。
心の声を聴くことで壁を取り払う
酒葉:
事業部の雰囲気は非常に良くなりました。以前は「グループが」「製品が」というまだ自分の所属はグループや製品で、事業部全体にまで意識が回らないという話し方でした。現在は「包材事業部が」「私の事業部が」と主語が事業部になった。懸念だったお互いの間にあった“心の壁”が取り払われたと感じています。
森川:
酒葉さんは当初、システムコーチングの導入に不安をお持ちでしたね?
酒葉:
組織内で思うように連携が取れておらず、期待している成果がなかなか上がりづらい状況でした。なんとか早く改善せねば、と「使えるものは何でも使おう」という気持ちではあったのですが、正直に言えば「そんな魔法のような方法があるのか?他の研修と何が違うのだ」と疑心暗鬼でしたね。以前はインドで子会社の社長をしていました。その当時やっていたのは徹底的にスキルを磨き、時間内に成果を出すことへの集中。それが経営だと思っていました。「人を大切にする」というのは頭ではわかっていましたが、つい後回しに。そこに正面から踏み込むシステムコーチングは、私にとって未知の領域だったのです。
森川:
その雰囲気はみなさんからも伝わってきていました(笑)。最初の合宿が1つ目のターニングポイントになりましたね。
酒葉:
この事業部は、出自の違う2つの部門が再編された組織です。配属された社員は「どうして一緒にやらなきゃいけないのか?」という思いを心に秘めていた。だから、私が「一緒に成果を出そう」と話しても、うなずきはするがどこまで納得しているかは疑問でした。私は「成果を出さねば。そのためには事業部がまとまらねば」という考えだし、部下は「上にいわれてもすぐには変われない」という感覚でしょう。「どうしたら事業部に一体感が生まれるのか?」と悶々と悩んでいました。
森川:
合宿の初日、システムコーチングのツールを使い、「組織改編の納得度」を表現してもらいました。部屋の中心に立つと「納得」で、中心から離れるほどに「不満」があると。みなさんが壁ギリギリまで離れているのを見て、「やはり」と思うと同時に「本音を出し始めてくれている」、そして表情からは「全員がこの状態をどうにかしたいと思っている」と感じました。
酒葉:
その思いが合宿で噴出しましたね。今までは「忙しいから」と理由をつけて本音で話すことを避けていたのです。でも合宿では、逃げ場がない。話すしかない。初めて私の悩みや思いも伝えました。それに対して「酒葉とグループリーダーとの心理的距離が近づけばもっと働きやすい」といった忌憚ない意見も出た。会社や製品の歴史と共にある自分の誇り、思いなども出し合った。どうすれば事業部が良くなるかを本音で語ったことにより、「ここまで腹を割って話していいんだ」と全員が気付けました。そこから、正直な思いが噴出し「お互いの心に壁がある」という問題が明らかになった。大きな前進だったと思います。
森川:
その壁を越えよう、と参加者は自分たちのチーム名を「Beyond the Wall」とつけられました。全体的な雰囲気は改善し、良きスタートとなりました。けれどこれは旅の始まりにすぎなかったことが明らかになっていくのですよね。
互いの領域に踏み込んで本音が言えるかが鍵
森川:
スランプ状態が続きましたね。事務局も私たちコーチ陣も、実はハラハラしながら見守っていました。
酒葉:
腹の中を出し合った合宿のインパクトが強かった。その反面、「ここまで話せたならもう十分じゃないか」という雰囲気になって議論が停滞してしまったのです。
森川:
相互理解は生まれたけれど「変化を起こしていこう」という話し合いになかなかならなかったですね。合宿後の2回のセッションは居心地の良い、いわゆるコンフォートゾーンで流している感じでした。心の壁を超えて、相手の領域に踏み込んで、本音で話していなかった。この状態こそが私たちと事務局が考えていた、プライムポリマーの真の課題でした。「誘導した方がいいのでは?」「いやメンバーを信じよう」と事務局と何度も議論しました。
酒葉:
製品別の組織や仕事のやり方へのこだわりをなかなか乗り越えられなかった。誰の頭にも、変えられるもの/変えられないものがあって、「変えられないものがある以上、それはしかたがないのでは?」というあきらめがあった。「せっかく理解し合えたのに、このままでいいのか」という思いから、全員で4 回目のセッション前日に集まって話したのですが、「理解し合えたから、十分じゃないか」「しかたない」という意見が多く出た。これでは心の内はわかり合えても、組織は何も変わらない。そこで私が肚をくくりました。「みんなでひとつの目標を追いかけられないようなら、いっそ事業部を解体してしまおう。オレたちは包材事業部として、更にプライムポリマーとして何をしたいんだ?それを一緒に見つけたいんだ」と伝えたのです。その結果、「変えられないもの」がなくなり、意見が出るようになりました。皆の顔つきが、もう一度変わったと感じた瞬間でした。
森川:
「合宿後に顕在化した大きな壁を超えたのだな」と、みなさんのスッキリした顔を見て感じました。4回目のセッションが2つ目のターニングポイントでしたね。かつてあった遠慮や疑念が一切なくなり、お互いの領域に踏み込んで言いにくいことや耳の痛いことも出し合えるチームになっていました。また、それまでは「包材事業部」に意識が集中していた皆さんが「プライムポリマー全体の未来」へと視座が上がっていました。これは、酒葉さんがリーダーとしてご自分の思いをメンバーの皆さんに晒して向き合われたからこそ起きた変化でしたね。
酒葉:
「プライムポリマーとして、オレたちはなんでもできるんだ」と全員で信じることができた。主語が「オレたちが」になったのです。
心でわかり合う組織は強い
酒葉:
まずは私自身が大きく変わりました。「話す・聴く」というそれだけのことがどうして今までできていなかったのだろう、と思いますね。でもその答えは出ていて、頭ではわかっていても心でわかっていなかった。それをわからせてもらえる機会が、システムコーチングだったと感じています。心をさらけ出して話し、相手の心の声も聴き取るリーダーとなる大切さを実感しました。そして組織を構成するメンバーが同じ場所に集まって、心でわかり合うと、お互いがチームとしてひとつになり、強くなれる。そのこともわかりました。
森川:
参加されたリーダー達だけではなく、事業部全体にも効果は出ていますか?
酒葉:
全メンバーに「包材事業部はどうすればよくなるだろうか」とアンケートを実施しました。回答は、最初の合宿で私たちが話し合った内容とほぼ同じ。そこで参加したリーダー達が変わった自分の姿を部下に示し、セッションでの経験や感じたことを発信していっています。リーダー達の思いのもと、「全員で組織を変えていこう」という雰囲気が徐々に出来てきていると思います。
森川:
とても嬉しい効果ですね。
酒葉:
その後、セッションに参加した中心メンバーの数人が異動になったのですが、部下をみると「なんとかなるんじゃないか」「自分たちで組織を作ればいい」という肯定的な雰囲気がある。熱が伝わったな、と感じていますよ。
森川:
今後はこの変化の波を全社へと広げていってほしいです。皆さんのチームの力がどんな影響を及ぼしていくか、とても楽しみにしています。
酒葉:
「なぜやる必要があるの?」から「絶対にやるんだ」に意識が変わりました。熱量が違いますね。それは社員に伝播していると思います。「やろうぜ!」と声をかけると反対する人間は出てきませんから。社長からも「一丸となっている雰囲気を感じる。チームの空気やそれぞれの表情がすごく良くなった」と評価されています。期待していてください。