Case

導入事例

NECの組織風土変革の舞台裏:
システムコーチング®が導いた驚きの変化

日本電気株式会社
第二金融ソリューション事業部 事業部長代理 杉田光太郎 様
第二金融ソリューション事業部 エキスパート 宮沢景子 様
エンタープライズ企画本部 マネージャー 越後達也 様

一般的に、組織にコーチングを導入し組織が変わるには約3年程度かかると考えられます。まずはコーチングを導入してスタートする1年目。 1年目を踏まえて、その組織内の事務局が自らもコーチングを学びながらコーチと協働する2年目。そして、事務局が自走し、コーチが見守り、サポートを行って進める3年目。この段階を経てコーチングのコミュニケーション方法や考え方が、その組織の文化として根付き始めるのです。 これを自部門の全社員に対して継続的に働きかけてきたのが、日本電気株式会社(以下、NEC)の金融グループ。 部門内の縦の関係を風通し良く、そして部門をまたぐ横の繋がりを創り、強化する。 その結果、部門内の全社員が繋がり、強いネットワークが構築されてきました。どのような取り組み、意識がそれを実現したのか、事務局で精力的に活躍する杉田さん、宮沢さん、そして越後さんにお話をうかがいました。
業界 IT サービス、社会インフラ
売上規模
(連結)
2兆9,940億円(2020年実績)
従業員規模
(連結)
114,714名(2021年3月末)
主要事業内容 社会公共、社会基盤、
エンタープライズ、
ネットワークサービス、グローバル

※ 所属、役職は取材当時のものです。

繋がりの強化が、組織の土台を固める

取材風景

左から 越後達也さん、杉田光太郎さん、宮沢景子さん

ー 今回の取り組みの背景と経緯についてお話しください

杉田:
NECの金融グループには3つの営業事業部((1)大手都市銀行、(2)信託銀行、地方銀行・信金、JA、証券、(3)生損保)と各営業事業部に相対するシステム開発部門があり、 それぞれの部門が違うお客さまにITシステム、サービスを提供しています。 昨今、金融マーケットはお客さま自体がホールディングス化され、これまでの垣根を越えた連携が進んでいます。 NECもまた部門間の壁を越えた「One金融」の組成が求めらていました。 しかし、壁になったのが、部門同士の横の繋がりの希薄さだったのです。 30年以上前からの組織構成の中で、各部門ごとに独自の文化ができあがり、いわば「村」社会のようになっていたのです。

宮沢:
仲が悪いわけではないですが、独立している感覚が強いので、相談やアドバイスがしづらい状況でした。 横の連携はあまりなく、連携しようという意識も欠如していました。また、事業部内も縦割り。 他の部が何をやっているかわからなかったり、関心がなかったりということもありました。

越後:
そこで、当時の金融担当執行役員である松原文明の声がけで、この「縦割り」の意識にメスを入れ、風通しの良い、誰もが生き生きと活動できる、より良い組織風土醸成を図ろうとなったのです。 これは松原がいつも話していることですが、組織風土は、部門の「土台」。建物を建てる「基礎」になる部分です。 基礎をしっかりと固めなければ、具体的な新たな「戦略」という新しい家は建てられません。 こういう経緯で、当時、当社の人事部門に在籍していた現ウエイクアップの小西さんと、金融部門で人材開発を担当していた私で、システムコーチング®※1による「文化創造活動」の取り組みを行うこととなったのです。

コミュニケーションで組織をほぐし、繋ぐ

ー どうしてコーチングという手法を採られたのでしょうか

越後:
基礎を固めるためには「腹を割って話せる信頼関係」が重要だと考えました。 先ほど宮沢の話にもありましたが、当時は「状況・環境対応型」、つまりリアクティブな人材が多かったのです。 ゴールは部門横断のコミュニケーションを実現し、「One 金融」を実現すること。 そのためには、まずお互いが人として知り合い、そしてお互いの組織を知り合い、結果としてチームとして一体になるというプロセスが必要です。 そこでは、コーチングの傾聴などのコミュニケーションスキルが大きく役立つ、と考えたのです。 当時、金融部門のトップがコーアクティブ・コーチング®※2によるエグゼクティブ・コーチングを受けていたことも影響していると思います。 まずは幹部クラスにコーチングを受けてもらおうということになりました。具体的には、幹部クラス15名程度でのシステムコーチングです。 杉田はそこで初めてシステムコーチングを体験しています。

杉田:
正直言うと、あまり効果を期待していませんでした。これまでも様々な研修を受けてきましたが、組織の話になると、外部の講師が語るのは彼ら自身が身を置いた組織や指導した組織が例になります。 私自身が属している組織とは、状況も事例も乖離している。感情移入しにくいし、真似て役立てることも難しいと感じることが多かったのです。 ですが、この時参加したものは、それまでとは違いました。コーチである小西さんは当社の人事部社員です。話してくれる事例や話は、全てNECのもの。 自分事として、腹落ちしたのです。「これは使える。組織を変えられる」という実感がありましたね。

越後:
自分の会社の事情・事例について話し合い、共に考えれば、業務の中ですぐに実践することができますよね。

杉田:
そして、その時期に私の事業部で「このままの組織ではいけないぞ」と思わされる契機があったのです。 NECでは、年に1度『One NEC サーベイ』という社員のモチベーションを測る調査を行い、結果を重要指標として用いています。 そのサーベイで2016年度、約130ある部門の中で当事業部が110位台という結果に。 私の所属する第二金融ソリューション事業部は先ほど触れたように多くの業態を抱える組織で、いわば「村」社会の典型。結果を分析していく中で、 当事業部の「村」社会の組織構造からくる縦割り・閉塞感、つまり風通しの悪さが、要因の一つではないかという結論に至りました。 それを改善するために、私と宮沢が推進役となって事業部内でもコーチングを実施することを決めました。

越後:
この活動が後ほどご紹介するような大きな成果を上げました。それを見た他部門も「自分の部門でも!」と取り組みを始め、現在のように部門全体の活動に発展していったのです。

ー 具体的にはどのような取り組みを行われているのでしょうか

越後:
金融グループの4部門には約1000人の社員がいるので、対象を幹部・部長クラス・マネジャー以下の社員と、3つのレイヤーに分け「文化創造活動」として取り組んでいます。 幹部層については、ウエイクアップに依頼して、今では年に1回程度ですがシステムコーチングのフォローアップ・セッションを実施しています。

宮沢:
部長層とマネジャー以下へは、継続的に少人数でのシステムコーチングのセッションを行っています。ウエイクアップや越後のサポートを受けながら各部門の社員が推進者となって主導し、実施しています。

杉田:
いずれのレイヤーについても、「ビジネスとして具体的に何をやるか?」という議論よりも、そこから抜け落ちている部分、 具体的には傾聴をはじめとするコミュニケーションの基本を身につけ、より良い関係性を創るための対話を行い、職場での実践を後押ししています。

宮沢:
受け身で学ぶのでは意味がないので、必ず「気づき・学びを持って帰って、業務の中で実践してください」と伝え続けていますね。 そのために、まず主導している私たち自身が、率先して実践するようにしています。そうして少しずつ定着していくのを、この4年間で実感してきました。

コミュニケーションの基礎スキル

新たな文化が編まれ、他組織にも伝播している

ー どのような効果や変化を感じていらっしゃいますか?

宮沢:
コミュニケーションが変わりました。部門を超えて、他愛のない会話のキャッチボールが行われるようになりました。 また杉田のように常に「自分に対しても気兼ねせず『(関係性を破壊するコミュニケーション上の)毒素出てますよ』といってくれ」と部下に伝える幹部も増え、 オフィスのそこかしこで上司部下問わず「○○さん、毒素が出てますよ!」といった声が聞こえますね。

杉田:
このシステムコーチングの良さのひとつは、シンプルで伝えやすいことですね。凝り固まった定型があるわけではないので、どんな話も私が経験した実際の事例をケースとして対話することができます。 だから、伝えやすいし、伝わりやすい。また、人としてだけでなくお互いの組織についても知ることができました。

宮沢:
コーチングを通して身につけたことで新しい共通言語ができ、金融グループ内の風通しが良くなり、一体感や連帯意識が高まっています。 まさに目指した「新しい文化」が生まれてきているのだな、と感じています。

越後:
2018年度のエンゲージメントサーベイでは、順位が全社トップクラスになるなど、大きく改善しました。 この取り組みだけで成し遂げたわけではありませんが、影響は大きいと感じています。 その後も、常に上位の成績を収め続けていて、同様の取り組みを始めたいという部門も出てきました。 金融グループの熱意が、他組織に飛び火しています。

ー 今後はどのような取り組みをされますか? またウエイクアップに求められることはどんなことでしょうか

宮沢:
2017年にスタートし、現在は事務局が多いときには月に2度ほど、メンバーを集めてセッションを行っています。 すでに全メンバーがセッションを受けたことになり、中には「また参加したい」「飲み会よりも本音が話せるのでいい」という声も(笑)自走できているなと感じています。

杉田:
金融グループ内で事業部の枠を超えた横断プロジェクトもこの数年でとても増えました。 各部門での組織風土の改善と「One 金融」の意識向上がその背景にあると考えています。 こういった活動が今後もより活発になるためにも、この取り組みは続けていきたいですね。 より良い文化を創造することが目的である以上、終わりはありません。 私自身も事務局として引っ張っていきたいと思っています。 そのモチベーションは「自分が動けば組織が変わる」という実感です。 この想いを広げ、「私たちが組織を、会社を変える」と熱意を持った、プロアクティブな自立型で創造型・能動型の人材を育成するお手伝いをしたいですね。

越後:
他組織での取り組みのスタートなどで、今後もウエイクアップには力を借りることが多いと思います。 杉田が話すように「文化を創造する」ことには終わりがありません。 この取り組み、そしてそれによって生みだされた良い効果が、NEC全体の文化として定着し、進化を続けるまで、ウエイクアップには伴走していただきたいと思っています。

※1 システムコーチング®:チームに対して行うコーチング。全員が肚落ちできる共通の目的について合意し、その実現に向けて全員で取り組む具体的な行動の実践を支援。
またそのプロセスを通じてチームの関係性の質を向上させていく。システムコーチング® は、CRR Global Japan 合同会社の登録商標です。 https://crrglobaljapan.com
※2 コーアクティブ・コーチング®:世界で初めて国際コーチ連盟に認定され、20ヶ国以上で行われている実践型コーチングプログラム

取材日:2021年3月11日
ページトップへ