Case

導入事例

ホンダが目指す変化と効果:
人事部門から始めるコーチング研修

本田技研工業株式会社
人事・コーポレートガバナンス本部 / 人事部 人事課 主任 松本信明 様
人事・コーポレートガバナンス本部 / 人事部 人事課 チーフ 河本智 様
ライフクリエーション事業本部 / 戦略企画部 人事・ブランド企画課 チーフ 永関円 様

コーチング研修は、マネジメント層や経営判断を任されているような役職に対して導入する企業が多くあります。ですが、本田技研工業株式会社(以下、ホンダ)の人事部では、人事・総務部門の人材育成として、まだ職位につかない「チーフ」という社内資格の若手層に対してコーチング研修を導入しました。部門をまたいであらゆる社員とコミュニケーションを取りながら、労働環境の整備をはじめ、会社のよりよい未来を創っていく人事部。その今後を担う「チーフ」にこそコーチングが必要だった、と松本信明さんは話します。その理由と、実際に受講したお二人の社員に、その感想と活用方法、今後の期待についてお話をうかがいました。
業界 自動車
売上規模
(連結)
15兆8,886億円(2019年3月末)
従業員規模
(連結)
219,722名(2019年3月末)
主要事業内容 二輪車、四輪車、
パワープロダクツ製造

※ 所属、役職は取材当時のものです。

未来を担う若手層にこそコーチングを身につけて欲しかった

人事・コーポレートガバナンス本部 / 人事部 人事課 主任 松本信明 さん
人事・コーポレートガバナンス本部 / 人事部 人事課 主任
松本信明 さん
ー 若手層にコーチングを導入された理由について教えてください

ホンダの人事部では、人事・総務部門を担う人材を育成する中でマネジメント層となる主任以降のキャリアに対しては研修が手厚く用意されているのですが、その手前のチーフにはあまり研修が行われていませんでした。ですが、チーフは今後の中核となっていく人材の候補。「彼らに充実した教育を行うことが、人事・総務部門の将来、ひいては会社の未来の成長にもつながる」と研修内容を模索していました。また、ホンダは風土としてティーチングが強い傾向。今後、人事のマネジメント層にはコーチングのスキルも必要、と考えていました。そんな中、課長数名がCTI ジャパンのコーチングワークショップを受講し、「チーフがコーチングのスキルを身につければ、今後に大きく活かせると感じた」と意見を出したのです。それが直接の決め手になりましたね。以前にも社内でコーチングの研修は実施していたことがあり、コーチングに様々なアプローチがあることは理解していました。今回、重視したのは「座学ではないコーチング」です。その点で、コミュニケーションの機会を多く持ち、反復して実践していくウエイクアップは最適でした。

ー 実施まではどのように進められたのでしょうか?

実施前に、ウエイクアップから受講者数名への事前ヒアリングがありました。実際にコーチング研修を担当する講師が、ホンダの実態や受講者の現状、困っていることなどを聴き取り、その結果をもとにプログラムの最適化を図ってくれました。教育研修の実施前にそこまで対応してくれる企業はなかなかありませんが、おかげで安心して当日に臨むことができました。プログラムは2.5 日のコースを選択しました。このコースを受講すると、その後進級しての継続学習が可能になるためです。チーフはこれからのホンダを担う社員たち。引き続きスキルアップして、将来、マネジメントにもコーチングを活かし続けて欲しいという想いがありました。

ー 若手層がコーチングスキルを修得することが、企業の成長にどのように貢献すると感じてらっしゃいますか?

コーチングは短期間で効果が出る教育研修ではないと捉えています。だからこそ、今後キャリアアップし、ホンダの人事・総務部門の将来を担う若年層へ導入したのです。ホンダにおいてチーフとは、自分で考え行動し、仕事をまわすことが求められるようになるポジションです。以前と比べ、圧倒的に業務上のコミュニケーション量も増えます。その時期にコーチングを身につけてくれれば、今後部下を持ってからもコミュニケーションに課題を感じることは少ないでしょう。

人事部では「これからの人事・総務部門に求められることは、人と人との相互作用によって自律的変化を促すこと。人や組織のパフォーマンスを引き出すこと。」と考えています。そこでは相手の真意や想いを引き出すコーチングが活きるはず。また講習を受けた社員間での相乗効果も必ず出てくると考えています。そんな風に、コーチングが人事部を変化させ、ホンダをより活性化させるベースのスキルとなれば、と期待しています。もうすでに日々の業務に修得したことを活かしているチーフもいます。彼らが身につけたコーチングを活かして、ホンダを成長させていくことを楽しみにしています。

多種多様な部門とコミュニケーションを取る人事部にこそ
求められる、コーチングスキル

ー お二人の業務について教えてください

永関:
ともに人事部門の所属ですが、私は埼玉県にあるライフクリエーション事業本部で、様々な製品の企画・生産・販売を支える複数領域の社員と関わりながら人事全般の業務を行っています。

河本:
私は本社人事部で、各社員の評価を扱う業務を担当しています。上長がどのように評価を下したのかヒアリングを行うなどの仕事をしています。

永関:
ホンダは日本だけでなく世界にも多くの事業所を持っていて、日本国内の事業所だけでもトータルで4 万人以上の社員が働いています。各事業所のそれぞれに人事部門が設置されており、直接部門はじめ全社員が働きやすい環境を作るために日々様々な業務を行っています。今は事業本部の人事担当として、事業戦略を人の観点から支えるために日々奮闘しています。関わる社員が人事部門以外の方ばかりなので、新しい観点の話も多いです。

河本:
私は本社勤務なので主に関わるのは人事総務や法務など間接部門の社員ですが、やはり日々の仕事は誰かとコミュニケーションを取ることで進んでいきます。チーフは新人と主任の中間。自分で考え、積極的に行動して、上司と後輩をつなぎながら仕事を進めることが求められる立場です。毎日のコミュニケーション量はとても多いですね。

左:河本智さん/右:永関円さん
左:人事・コーポレートガバナンス本部 / 人事部
人事課 チーフ 河本 智 さん
右:ライフクリエーション事業本部 / 戦略企画部 人事・ブランド
企画課 チーフ 永関 円 さん
ー 受講前に期待されていたのはどんなことでしたか?

河本:
課長や前年に講習を受けた社員たちから、「受けて良かった」という感想を聞いていたので、自分が受講できるのをとても楽しみにしていました。後輩社員から相談を受ける機会も増えており、相手の思いをうまく引き出す方法をつかめればな、と期待していました。

永関:
「コミュニケーションを円滑に取れるヒントや気づきがあればいいな」と期待していました。日々多くの社員から相談や報告を受けていますが、「求められている答えを提示しなければ」と焦ることもあります。表情が晴れないまま帰る社員を見て「もっと有意義な会話ができれば」と力不足を感じることもありました。

会話を活性化し、アイデアの発想を助ける未来への貢献が
期待される「傾聴」

ー 実際に受講した感想について教えてください

永関:
本を読んだりして事前に調べていたものと、ウエイクアップのコーチングは様々な点で違うものでした。座学ではなく、何度も様々な方法で反復練習をしてコーチングのスキルを身につけていくというやり方は、とても楽しくそして実践的で、私自身よかったと思っています。

河本:
社外で実施され、上司・先輩がオブザーバーとしてほぼ立ち入らなかったので、とてもリラックスできました。参加者は、入社年度も近い気心の知れた20 代後半から30 代のチーフ社員ばかり。普段からよく会話している同士です。でも研修の名目で集まり、上司などの目があると「求められている答え・態度は何だろう」と“正解”を探そうとする。それでは自分の気持ちとのギャップができてしまいますよね。

永関:
ホンダはワイガヤの文化が根付いたざっくばらんな社風ですが、やはりオフィスではある程度「仕事モード」になります。その状態では本心ではなかなか話せませんよね。私自身、ホンダを良くするにはみんなが普段からもっとフランクにコミュニケーションを取る方がいいだろう、と感じていたので、講習の環境と雰囲気はとても良かったですね。

河本:
コーチングを学ぶ中で、よく知っていると思っていた仲間の意外な一面を知ることができましたし、自分とも向き合い本心に気づき、性質を客観的に把握できるということもできました。中でも「傾聴」は、今後に大きく活かせると感じています。

永関:
「求められている回答を出せる会話の仕方ができないか」と悩む中で、相手の考えを理解し、共感することを一番に考えていました。ですが、結果的に共感しすぎて一緒に困るだけで終わることも多かったです。今回、講習を受けることで、「答えは相手の中にある」と教えてもらえました。さらに、相手をその答えに気づかせてあげられるよう、表情を読み解き、会話を引き出す方法なども学べました。期待以上に、求めていたものが見つかったと感じています。普段の業務でも講習の内容を思い出し、少しずつ実践しています。

河本:
私にとっても、まず相手の話に耳を傾け、終わってからシンプルな質問を投げかける、というやり方はとても参考になりました。実際、オフィスでの会話も相手の答えが変わったなと感じることも多いです。今回は仲の良いメンバー同士だったので、今後は上司・先輩や様々な立場の人と会話し、反復練習してスキルを磨かねばと思っています。

ー コーチングがホンダの成長にどうつながるでしょうか?

永関:
「正解を出さないといけない」という焦りは、誰しも日常的にあるものだと思います。もちろんそれが必要なときもありますが、コーチングで学んだ傾聴を使って「相手が思っていること」を引き出すことで、新たなアイデアが見つかることもあるはず。ホンダの成長にはそうやってざっくばらんにアイデアが出せる風土の醸成が必要だなと思っています。

河本:
マネジメント層を目指す私たちがコーチングのスキルを身につけたことは、今後に大きく活きると思います。傾聴し、想いや答えを引き出すことができる上司が増えれば、もっと会話も議論も活発になるはず。コーチング未経験の上司たちにもこのスキルを身につけてもらうことで会社の環境は大きく変わる、と思います。期待しています。

取材日:2020年2月19日
ページトップへ