グリコが挑戦したメンターシステムがもたらす
社内コミュニケーションの変化
江崎グリコ株式会社 グループ人事部 様
業界 | 食品 |
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売上規模 | 338,437百万円(連結:2016年3月期) |
従業員規模 | 4,961人(連結:2016年3月末) |
事業内容 | 菓子、食品の製造および販売 |
※ 所属、役職は取材当時のものです。
社内改革へのファーストステップとなった「GMP:グリコメンタープラン」
中谷:
マーケティング部を対象にトライアルとしてスタートしたグリコメンター
プランですが、効果が少しずつ出始めていると感じています。まず、社内のコミュニケーションが活発になりました。プログラムでは、直接仕事では関わりのない、担当製品の違う社員同士をペアにしました。どうしてもメンティーである新入社員は、コミュニケーションの相手が同じグループの先輩や上司に偏りがちでした。でも、いまではグループを越えてアドバイスを求めることができるように。複数の視点からのアドバイスを参考にして業務を進めることができているようです。メンターの活動報告書を見ると、仕事やキャリアの悩みから、ごくプライベートな相談事まで、幅広くメンターが聞き出し、相談に乗っていることがわかりました。メンティーである若手がどのような悩みや不安を抱えているのかがよく分かりましたし、メンターがそれを聞き出し、解決に向けた支援ができているというのは想像以上の大きな効果だと感じています。
相川:
先輩として指示やアドバイスをする、発信するコミュニケーションに慣れているので、最初は傾聴に難しさを感じているようでしたね。でもウエイクアップの研修を参考にして、徐々にメンティーから話を聞きだし、それに対して自分の経験からアドバイスをするなど、工夫して進めているようでした。その中で各自が自分のコミュニケーションスキルが向上したのを実感していますし、なにより今後のキャリアに必要とされるマネジメントスキルを身につけることができたと感じているようです。日常の業務やプライベートでも傾聴スキルを活かし、人間関係が円滑になったという声も聞いていますね。
中谷:
当社では管理職になるまではなかなかマネジメントの機会を提供することができていませんでした。また、部門によっては後輩がなかなかできない中堅社員もいます。彼らがメンターとなることで、マネジメントの経験を積めたというのは大きいですね。今回、ウエイクアップから提案してもらい、メンターは立候補で募りました。集まるだろうか、と不安だったのですが「人の育成に関わる上で大切なのは、気持ちがあること。新しいことを始める際には『適切な人をバスに乗せろ』という鉄則があります。今回で言えば『人を育て、会社を変えていこう』という気持ちを持った人が“適切な人”。メンター側にもメリットがあることをしっかりと伝えれば、共感し、手を挙げる人は必ずいるはずです」と説得してもらい、決断できました。実際には定員を大きく上回る意志ある社員が「若手の育成に携わりたい。この会社をもっと良くしていきたい」と応募してくれました。そういった人材を把握し、彼らが学び、実践する機会を提供できたことは非常に大きな意味があります。またグリコメンタープラン開始数ヶ月後に、振り返りの場を設けようという提案もいただきました。メンター同士がうまくいっていること、課題点などを話し合い、今後に向けてコミュニケーションを図ることができ、効果を向上させることに繋がったと思います。智慧の集積にも役立ちましたね。同時に、若手の抱えている問題が具体的に分かったこと、そしてその解消に向けて動き出し始められたこともグリコメンタープランの意義として大きいです。
将来の人材育成と若手へのケアが導入の目的
中谷:
若手の育成に関してはOJT を行っていました。OJTは教えなくてはいけないことが多いので、ティーチング中心になりがちです。忙しい日常の中で教えることが増えてくると、若手にとっては指示や命令に聞こえてしまう事もあります。また、OJTリーダーとなる社員はその社員を育成する目的もあるため、同じ部署のすぐ上の先輩社員が指名されることが多く、自分自身の業務が忙しくて手厚いケアができず、効果が上がりづらくなっている現状がありました。そのような環境の中では将来のキャリアやプライベートについての相談をする時間的・精神的余裕が生まれづらく、OJTリーダーも若手の悩みを拾い上げにくいという状態が続いていました。他社の事例などを参考にするうちに、斜めの関係としてもう一人メンターを設けることで、OJTの抱えている課題をカバーできるのではないかと感じました。また、当社はキャリア入社の社員が多くいますので、前職でメンター制度の良さを経験してきた社員からの要望も高かったですね。それと先ほどお話しした、中堅社員のマネジメントスキルの醸成もできるのでは、という期待もありました。
相川:
昨今、大学時代から自分のキャリアを具体的に描いて入社する若手社員が
増えました。しかし入社すると、まずその通りには進まず、ギャップに悩むことになります。その時に相談先がないと、ギャップを抱えたまま「どうして自分だけが」と不安や不満ばかりが大きくなってしまう。でも、多くの先輩社員は、そういう葛藤を自分の中で消化し、その上で活躍しています。そういったプロセスを経てきた社員に、若手を導いて欲しいと考えました。当社は「smile.Glico」を掲げています。メンターにはうまく若
手の悩みを聞き出し、その上で様々な変化を前向きに捉え、自分のキャリアを自ら切り拓いていく事を支援できる存在になって欲しい。そのためにはメンターの育成がなによりも大切です。ただ、当社は昔から傾聴するコーチングのスキルが苦手です。そこで、ウエイクアップに依頼をしたわけなのです。
思いを引き出し、形にしてくれるウエイクアップの研修
相川:
OJTリーダーを経験することで、ティーチングについては多くの社員ができていました。それもあり、仕事上のコミュニケーションとは「具体的に指示するもの」という認識がどこかにありました。だから余計に、コーチングという、プライベートや悩み、希望といった正解のない物を引き出そうとするコミュニケーションは苦手。そこでまず「ティーチングとコーチングの違いを教えてください」とお願いしました。
中谷:
立候補を募ったこともあり、モチベーションの高い社員が参加しました。普段は業務の話しかしない社員が、研修では自分や人のことを話すことになります。彼らがいきいきとした表情で楽しそうに自分や尊敬する先輩の話をする様子を見られたのは個人的にも嬉しかったですね。仕事のモチベーションとなっているエピソードでは感動的な話も多く出て来て、「だからグリコで働いているんだ」と熱く話す社員に、聞く側も共感し、会社を思う気持ちを新たにしているようでした。社内ではもちろん、飲み会でも話せないようなそれぞれの“原点” の話を引き出せる研修にしていただけたのは本当に良かったと思います。もともと「会社をよりよく変えていきたい」「後輩をしっかり育てたい」という意志の強い参加者でしたが、お互いに共感することで、よりその気持ちに熱がこもった感じでしたね。
中谷:
グリコメンタープランのコンセプトが固まりきっていない段階から協力いただきましたが、研修はじめ細部まで相談に乗っていただき、一緒にプログラムを形にしてもらったパートナーのような存在だったと感じています。私たちが、認識はしているけれど言葉にできていない、課題や問題点を引き出してもらって、そのための解決策としての研修を実施してもらえたのが、いちばん良かった点だと思っています。グループ人事部では様々な企業に研修を依頼しますが、パッケージのような研修の切り売りだと「同じ内容を社内のリソースを使ってやればよかった」と思ってしまいます(苦笑)。ウエイクアップは、こちらの状況や要望に合わせて柔軟に対応してもらえ、効果も引き出してもらえました。依頼して良かったと思っています。社内の打合せは、具体的な内容で、ゴールに向かう理詰めの物が多くなりがち。一方、ウエイクアップとの打合せは「何を話しても良い」という安心・安全な場である感覚が強く、プロセスがコーチングそのもの。いろんな刺激をもらい、柔軟な発想でクリエイティブなアイデアをたくさん生み出すことができました。何よりも楽しかったですね。これはいわばGlico スピリットである「創る・楽しむ・わくわくさせる」に繋がるもの。今後も参考にして、社内でも同じように話し合いの場を持てるようにしたいなと思っています。
「新しいグリコ」を創造するパートナーとして
相川:
グリコメンタープランによって、社内風土に新しい価値感が生まれてくると感じています。その中で生まれた新たな価値観を、根付かせていかないといけないと思っています。グリコの更なる成長のためには、今こそ大きな社内改革が必要です。そこにはこの価値観が必ず生きてくると感じています。ぜひ力をお借りしたいですね。
中谷:
グリコメンタープランだけでなく、OJTリーダーの育成やマネージャー研修にもコーチングを生かしていきたいと思っています。自分から話すだけでなく、話を引き出すという双方向のコミュニケーション力が高まり、社内の意思疎通が活発になることで、新しいアイデアがより生まれやすい社内の環境が整うでしょうし、人材の定着にも効果があると思います。グリコを進化させるひとつのカギだと考えていますので、ぜひこれからもご意見とアイデアをどんどんいただきたい。期待しています。