ヤンマーパワーテクノロジー株式会社 様
ヤンマーパワーテクノロジーが取り組む、対話型ワークショップから始まる組織風土改革
WAKE UP Solutions:
ヤンマーパワーテクノロジー株式会社 様
- 業界
- 機械メーカー
- 売上規模(連結)
- 1,079,652百万円(2025年3月末)
- 従業員規模(連結)
- 26,671名(2025年3月末)
- 主要事業内容
- エンジンの開発・製造・販売・サービス
お話を伺った方
※ 所属、役職は取材当時のものです。
- 取締役 経営企画部 部長
- 北川善之 様
- 経営企画部 人事総務部 人事総務グループ 課長
- 藤原恵 様
- 経営企画部 人事総務部 人事総務グループ
- 三田由貴 様
産業用小形エンジンや大形舶用エンジンを中心に、エンジンの開発・製造・販売をおこなうヤンマーパワーテクノロジー株式会社(以下、ヤンマーパワーテクノロジー)。採用の困難さやエンゲージメントスコアの停滞に直面した同社では、従業員がいきいきと力を発揮できる環境作りを目指し、2023年度より対話型のワークショップを始めました。2023年度と2024年度に連続して実施したワークショップにより、社内ではどのような変化が現れたのでしょうか。取り組みの中心となって活躍する北川さん、藤原さん、三田さん(以下、文中敬称略)に、ウエイクアップの営業担当者である五十嵐と井上がお話を伺いました。
この記事の目次
組織風土の改革を目指し、対話型ワークショップの実施を決意
御社では、ウエイクアップのサポートのもと、2023年度から組織風土づくりのワークショップを継続して実施されています。まずは、それ以前の状況や、課題感についてお聞かせください。
三田 ワークショップの実施以前は、「採用の困難さ」や「エンゲージメントスコアの停滞」などの問題を抱えていました。さらに経営幹部においても、当社では相手への配慮を重んじるあまり、「コンフリクトを避けがちで議論が弱い」「保守的で受け身の姿勢が多い」といった、組織風土に関する問題意識がありました。どうにか解決したいと思っても、毎年実施しているエンゲージメント調査だけでは、こうした課題の背景や要因まで把握することは難しい状態でした。 そこで、従業員の成長を妨げる要因の分析を目的とした追加調査を実施しました。結果、「自主性を持ち、やりがいを感じながら仕事に取り組んでいる」といった強みが明らかになる一方、課題も浮かび上がりました。具体的には、「フィードバックや上層部とのコミュニケーションが不足しており、従業員の意見が十分に吸い上げられていないことが、成長実感の低下につながっている」といったことです。 こうした結果から、「これらの課題を改善することで、組織風土に良い影響が生まれるのではないか」という仮説が導き出されました。そして、その仮説をさらに検証し、「現場のリアルな声から組織風土の解像度を高めること」「従業員を巻き込みながら、取り組む施策を考えること」を目的とした、対話型のワークショップを実施することになったのです。ただ、当社ではこれまでワークショップの開催経験がほとんどなく、どこから始めれば良いかと手探りの状態でした。そこで、知見をお持ちのウエイクアップさんにご相談し、2023年11月から取り組みをスタートさせました。
当時「アンケート調査だけでは、従業員の本音が明らかになっていないのではないか」という点を気にかけていらっしゃいましたね。2023年度は、まず従業員の方々の本音を引き出すことを目的として「若手・ベテラン・役職者層・経営層と従業員」を対象とした、計4回のワークショップを実施しましたが、いかがでしたか?
三田 事業部横断でのワークショップはほとんど実施したことがなかったため、参加者には最初は戸惑いが大きかったです。特にベテランのなかには、アンケートで会社に対するネガティブな思いを表明している人もいたので、「どうなるのだろう」とドキドキしていたのが正直なところです。ところがいざ実施してみると、そうしたベテランほど、会社への深い愛着を持っていることが明らかになったのです。また、まずは本音を出し切ることに焦点を当てたためその場で課題を解決しなかったにもかかわらず、「課題について共有できたこと自体に大きな満足感があった」といった声が寄せられたことも意外でした。従業員の意見を抽出する場を設けることの重要性を再認識したと同時に、今までそうした機会を設けられていなかったという事実にも、改めて気づかされました。
北川 ワークショップの実施により、これまで社内で起こった出来事や結果ばかりに注目してしまい、「人」をしっかり見ていなかったことに気づかされました。ヤンマーパワーテクノロジーでは、専門性を活かすために、それぞれが分業的に業務を担っているのが実態です。そのため、部門をまたいだ横のつながりや従業員同士の連携が希薄になっていたと感じています。実際にワークショップに参加した従業員からは、「なぜもっと早くこのような場を用意してくれなかったのか」といった声が挙がり、そのような意見を出してくれた従業員と同様に、困ったり悩んだりしている従業員が想像以上に多かったことが明らかになったのです。一人ひとりの従業員にもっと目を向けるべきだったと痛感しました。
計4回のワークショップを実施。最終回では従業員の本音が垣間見れた出来事も
「一人ひとりの従業員の思いを捉えきれていなかった」という発見は、北川さんにとってかなりインパクトの大きなものであったのではないでしょうか。2023年度に実施した計4回のワークショップのうち、どのタイミングで気づかれたのですか?
北川 たしか最終回だったと思います。同ワークショップでは、これまでに参加した従業員のうち複数名と経営層が集まり、計15名でシステムコーチング®※のワークを実施しました。社長や部長、課長、一般の従業員など、普段とは異なる役職になりきり、その立場から組織風土改革について発言するというものです。この部分だけでも、従業員一人ひとりの、よりリアルな考えや想いに触れることができました。また、ワークショップの終わり頃に起きた出来事についても強く印象に残っています。ワークの終盤で将来に向けて取り組むべきことを一人ずつ紙に書き、それを発表する場面がありました。するとある若手が突然、「綺麗事ばかりを言ってどうするんですか?」と声を挙げたのです。あの時はとても驚きました。
あの時のことは、私たちも非常によく覚えています。戸惑っている方も多かったように見えましたが、皆さんはこの出来事をどのように捉えていらっしゃいますか?
三田 これだけ強く記憶に残っていることからも、当社としてはとても珍しい光景だったのだと思います。参加者のなかには「自分もそう感じていた」と共感した人もいれば、「あの人は何を言っているのだろう」と戸惑った人もいたでしょう。けれども、あの出来事はコンフリクトを恐れず、立場に関係なく本音を語り合えた貴重な瞬間だったと感じています。 今でこそこのように振り返ることができていますが、正直に言えば、最終回が終わった直後は「これで良かったのだろうか」と少し不安な気持ちがありました。しかし、当日の懇親会で、参加者の皆さんから「こういった取り組みは一日で成果が出るものではないので、続けていくことが大切だと思う」と声をかけられ、従業員の皆さんがこういった場を求めていたことに気づかされました。実は私自身、人事業務において、組織風土改革にそこまで時間をかけて取り組むべきだという認識はあまり持っていなかったのですが、この経験を通じて、その重要性を実感しました。
北川 あのワークショップに社長・事業部長・企画管理部長が同席していたことは、非常に大きかったのではと感じています。世代や役職を超えた「真の意味での語り合い」につながったのではないでしょうか。
「Change & Challenge」をテーマに掲げ、若手・ベテラン向けのワークショップを開催
続く2024年度は、本格的な組織文化の変化につなげていくため、「Change & Challenge」というテーマのもと、若手・ベテランの方々を対象としたワークショップを2回実施しました。実施当時は、どのような目標を掲げられていたのでしょうか?
三田 2023年度のワークショップの実施により、「まずは組織風土に関する対話の場に参加してもらい、当事者意識を持てるようになることが重要なのではないか」との気づきを得ました。そこで、さらにワークショップの参加者を増やし、仲間を拡げることを2024年度の目標に設定。ヤンマーパワーテクノロジーで以前から掲げてきた「Change & Challenge」という言葉をテーマに、若手・ベテランを対象に実施しました。
2024年度は、2023年度とはテーマも規模も異なりましたが、同じくらい大きなインパクトがあったように感じています。2024年度のワークショップによる、社内の変化はいかがですか?
三田 ワークショップの実施後は、「これまでのルーティンから抜け出して、新たな一歩を踏み出したいと感じた」「行動したいという意欲が芽生え、イベント後もその気持ちが継続している」などの声が挙がっています。実は、これまで、「Change & Challenge」という言葉に対しては、従業員から「ものすごくハードルが高く難しいもの」「自分には難しいもの」などと受け止められている部分がありました。そのため、ワークショップが「Change & Challenge」に向けた第一歩を踏み出す場になれたことを、前向きに捉えています。会社全体の組織風土改革という意味で、今後も活動を継続することでより大きな変化につなげていきたいと考えています。
2023年度・2024年度のワークショップの実施後、エンゲージメントスコアが上がり続けているとお聞きしています。どのような要素が数値の上昇につながっているとお考えですか?
藤原 「会社を良くしていこう」という姿勢が従業員に伝わったことが、スコアの上昇につながっているのではと考えています。以前アンケート結果を分析していたところ、現場で働く従業員向けのアンケートにおいて「このままではエンゲージメントが上がらない」といったコメントが見られました。以前はエンゲージメントという言葉自体があまり使用されていなかったことを考えると、組織風土改革の取り組みが徐々に浸透し始めているのではないでしょうか。ワークショップの参加人数はまだ限定的ではありますが、「会社は従業員を大切にしている」というメッセージが、取り組みを通じて着実に広がりつつあるのではと思います。
三田 ワークショップの実施前には、「従業員の意見を吸い上げる機会を増やせば、エンゲージメントを含めて、課題の改善が見込めるのではないか」という仮説を立てていました。この仮説のとおり、ワークショップの実施が数値の改善に良い影響を与えているのかもしれません。また、最近は、社内イントラネット上にワークショップなどの組織風土に関する取り組みを従業員に伝えるポータルサイトを開設しました。このポータルにより活動が可視化されたことも、エンゲージメント上昇の要因ではと考えています。
分社を控えていても、改革の手を止めず活動し続けたい
2025年10月に分社を控えるなかで、今後も組織風土の改革を続けるのは、簡単なことではないと思います。それでも、「この活動を止めずに継続したい」と前に進み続ける、皆様の思いを最後にお聞かせください。
北川 私はこれまで実施したワークショップについて、「2023年度はゼロを“1”に変えた年」「2024年度は“1”を広げていった年」だと認識しています。2023年度・2024年度と連続して実施したことで、社内では「組織風土改革に関する新たな活動に取り組んでみよう」といった動きも芽生えてきました。そのため、あとは活動を継続していくだけだと考えています。今五十嵐さんからお話があったように、2025年10月には分社を控えており、一時的に組織文化をつくる活動が難しくなる可能性は高いですが、分社後も文化醸成活動を継続したいと考えています。
藤原 2025年度は、信頼関係を築くうえで重要な一年になると考えています。従業員から「あの取り組みは結局どうなったんだろう」と言われることのないように、しっかりと信頼を積み重ねていきたいですね。創業から100年続いてきた当社には、長年培ってきた確かな良さがあると思います。分社後も、その良い部分を大切に守りつつ、活動を続けていきたいと考えています。
三田 やはり、2025年度は正念場だと感じています。今までと同じことをやり続けようとしても、効果は見られないのではないでしょうか。特に2024年度は、「Change & Challenge」を一つのテーマとしてワークショップを実施しました。「Change & Challenge」は、今後も当社における大切な考えとして受け継がれていく可能性が高いため、同テーマを軸にしたワークショップは続けていきたいと考えています。しかし、同じテーマの取り組みを続けようとしても、会社組織が変わっていけば、だんだんと意識が薄れ、活動が停滞する可能性もあります。そのため、これから取り組む2025年度のワークショップを通じて、「今後何ができるのか」を考えていくのが非常に重要であり、今後につながっていくのではないでしょうか。
引き続き、皆さんの「パートナー」として伴走してまいります。本日はありがとうございました。
本インタビュー後にプレスリリースを発表しておりますのでそちらもご覧ください。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000005.000159018.html
※システムコーチング®:チームに対して行うコーチング。メンバーが肚落ちできる共通の目的について合意し、その実現に向けた具体的な行動の実践を支援、またそのプロセスを通じてチームの関係性の質を向上させていきます。システムコーチング®はCRR Global Japan合同会社の登録商標です。https://crrglobaljapan.com/


