パナソニックグループ 様
パナソニック オペレーショナルエクセレンス株式会社 様

パナソニックグループでコーチング展開活動を実施:有志18名による「パナソニック コーチング・ブースターズ」

WAKE UP Solutions:

パナソニックグループでコーチング展開活動を実施:有志18名による「パナソニック コーチング・ブースターズ」
パナソニックグループ 様

パナソニックグループ 様

業界
電気機器、総合電機
売上規模
8兆4,582億円(2025年3月末)
従業員規模
207,548名(2025年3月末)
主要事業内容
家電や住宅設備をはじめ、製造・物流現場の機器やシステム、モビリティ・社会インフラを支える電池や電子部品など

お話を伺った方
※ 所属、役職は取材当時のものです。

パナソニック コーチング・ブースターズ
戒能直美 様
パナソニック コーチング・ブースターズ
松川善彦 様
パナソニック コーチング・ブースターズ
寺石牧子 様
パナソニック コーチング・ブースターズ
中村保仁 様

パナソニック オペレーショナルエクセレンス株式会社 組織・人材開発センターでは、コーチングを社内に拡げる活動である「コーチング・ブースターズ」を2023年から実施しています。パナソニックグループの約20万名の従業員を対象として、コーチングイベントや体験会の実施、社内に点在するコーチのネットワーク化や社内コーチの育成、そしてキャリア入社者やマネジャーの悩みに伴走するコーチングの提供まで、多岐にわたる活動を継続的に展開し、社内にコーチングの輪を広め続けています。パナソニック オペレーショナルエクセレンス株式会社 組織・人材開発センターにて、取り組みの中心となって活躍する戒能さん、松川さん、寺石さん、中村さん(以下、文中敬称略)に、ウエイクアップ平田(代表取締役社長 CEO)と長沢(法人事業統括ディレクター)がお話を伺いました。

この記事の目次

すべての始まりは、「社員をコーチングでサポートしたい」との思いから

第10回(2024-25)ウエイクアップ・アワード※1の受賞、おめでとうございます。今回は「パナソニック コーチング・ブースターズ」について、改めて、じっくりお話をお伺いできればと思います。まずは、取り組み開始のきっかけをお聞かせいただけますか。

戒能 ありがとうございます。「パナソニック コーチング・ブースターズ」は、私自身の経験から社内に呼びかけ、共感してくれたメンバーで始まった取り組みです。かつて、仕事で自分のポテンシャルをうまく発揮できず苦しい時期を過ごしていた時、知人である対人支援のプロに悩みを聞いてもらい、気持ちに寄り添ってもらうことで、少しずつ状況を切り開けるようになったことがありました。この経験を通じて、「自分に寄り添ってくれる存在がいることの心強さ」を実感して、私も対人支援の道を歩みたいと思い、まずは、キャリアコンサルタントの資格を取り、その後コーチングを学びました。そして、コーチングを学んでいくなかで「このCo-Active®※2の考え方や『NCRW』※3を社内に広めたい」という思いを持つようになったことや、「かつての自分と同じような悩みを抱える人たちを、コーチングを通じて支援したい」と考えるようになったことが、この活動を立ち上げたきっかけです。そうした私の思いに共感してくれた、有志のメンバー17名とともに、2023年度から取り組みをスタートさせました。

ご自身の体験を元に、グループ全体にコーチングを広めていきたいと考えられたのですね。パナソニック コーチング・ブースターズが立ち上がった頃の社内は、どのような状態だったのでしょうか?

戒能 当時、社内にはコーチングの資格を持つ社員が何名かいましたが、その多くが身近な範囲での、個人的な実施にとどまっていました。また、グループ企業内でもコーチングへの関心は高まりつつあったものの、各社が個別に社外コーチへ依頼している状況でした。このような状況を踏まえ、「せっかく社内に有資格者がいるのに、十分に活用されていないのはもったいない」と感じた私は、コーチ資格を持った数名のメンバーに対し、個別にヒアリングを実施しました。すると、「本当は社内でコーチとして活躍したいと思っている」「せっかくコーチングを学んだが、仕事にはあまり活かせていない」といった声が集まりました。そこで、「社内のコーチ仲間でネットワークを構築し、そのコーチたちの力も借りながら、パナソニックグループ全体にコーチングを広めていけないか」と考え、パナソニック コーチング・ブースターズの活動開始に踏み切りました。

松川 パナソニック コーチング・ブースターズを始める以前は、社内にコーチングの資格を持ったメンバーがいるのはわかっていましたが、どの部署にどのようなコーチがいるのかについては、全く把握できていませんでした。そこで、初年度は「社内でのコーチング啓発活動」をメインとした活動を実施しました。それと並行して、「社内コーチ人材のネットワークづくり」「我々が所属する『組織・人材開発センター』内でのコーチ育成」にも取り組むことしたのです。なお、このセンター内の新たなコーチ育成活動の一環として、ウエイクアップさんにはCTI JAPAN※4提供の基礎コースを社内で2回開催していただきました。

パナソニック コーチング・ブースターズの活動開始後、どのように社内コーチングに関する取り組みをスタートしたのでしょうか?

中村 当時は、社内コーチを活用した本格的なコーチングプログラムはまだ存在していませんでした。そこで、まずコーチングの効果を実感してもらいやすい対象として考えたのが、キャリア入社の皆さんです。パナソニックには「ものをつくる前に人をつくる」という言葉があるほど人材育成を重視していますが、キャリア入社者は、年齢や役割はもちろん、これまでの経験値や専門性も人によって異なるため、一律の育成や支援が難しく、現場のマネジャーや人事部門もその個別サポートには苦労していました。また、キャリア入社者本人も、人脈などの組織内のつながりや、組織文化の理解もないなかで即戦力であることを求められ、人知れず悩んでいる人も多い状況だったのです。

キャリア入社者向けのプログラムでは、どのようにコーチングを活用されたのですか?

中村 社内プログラムとしてはじめて、コーチングを柱の一つに据えた「キャリアオンボーディング・ブーストアップ・ブログラム(略称B-UP)」を立ち上げ、そのなかで、3か月間に計5回の連続オンライン個別コーチングを提供しました。このプログラムを通じ、これまでに延べ300名以上にコーチングを体験してもらっています。

個別コーチングの実施による効果はいかがでしたか? キャリア入社の皆さんには、どのようなインパクトがあったのでしょうか?

中村 多くの受講者は、入社後半年ほどが経ち、理想と現実のギャップに悩み始めることが多いタイミングでこのプログラムに参加しています。そんな苦しい状況のなかでも、コーチが伴走することで、「これまで把握できていなかった自分の強みに気づけた」「新しい環境でも、自分らしく活躍するためのヒントが見つかった」という声が寄せられました。このように、コーチングのお陰で、「より自分らしく活躍できる人」が継続的に増えていけば、少しずつ周囲の社員にもインパクトが出てくるだろうと考えています。

キャリア入社研修のほかには、どんな研修にコーチングを組み込まれているのでしょうか?

戒能 まさに今、いろいろとトライしているところです。一部、組織開発の一環として、部門ごとのマネジャーに対してコーチングを提供している例などがあります。各種プログラムとコーチングを組み合わせることで、我々だからこそお届けできる付加価値を生み出したいと考えています。 また、2023年度と2024年度は、コーチングの啓発活動や、社内コーチ人材のネットワークづくりを中心に実施してきました。2025年度からは少し方向性を変え、より私たちのセンターのミッションである「人・組織・マネジメントを解き放つ」ことや事業に貢献できるような活動にシフトしていきたいとも考えています。

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左から ウエイクアップ長沢、戒能直美さん、寺石牧子さん、松川善彦さん、ウエイクアップ平田

Co-Active®コーチングと、松下幸之助の考えに共通項を発見

これまでは「コーチングの啓発活動や、コーチ人材のネットワークづくり」に注力されてきたとのことですが、社内に向けてコーチングを広めるのは、なかなか難しい面もあると思います。活動を続けるなかで、難しかったことや、その課題を乗り越えた方法について教えてください。

戒能 私にとっては、活動開始に向けた一歩目を踏み出すことが、最も難しかったと感じています。実は、6〜7年前から「こんな取り組みができたらいいな」とコーチング・ブースターズのアイデアを温めていたものの、なかなか自分に自信が持てず、最初の一歩を踏み出せずにいました。しかし、コーチ仲間でもある元上司が背中を押してくれて、一緒にコーチング・ブースターズを立ち上げることになったのです。そこで、センターの経営会議で取り組みの概要を説明し、「一緒に取り組む仲間を募集します!」と話したところ、17名もの人が手を挙げてくれました。いざ始めてみると想像以上にスムーズに進んだものの、アイデアを行動に移すまでには、特にパワーが必要だったと感じています。

寺石 仕事(本業)との両立やグループ全体への活動の周知は、現在も取り組みを進めているテーマのひとつです。「コーチング・ブースターズ」は、思いを持った有志メンバーによる活動であり、それぞれが本業を持ちながらも、自発的に関わっています。だからこそ、活動には熱量があり、工夫次第でさらに可能性が広がると感じています。また、パナソニックグループは非常に大きな組織であるため、まだまだ多くの人にコーチングを届けられる余地があるのが現状です。今後も、より効果的な発信方法を模索しながら、活動の魅力や価値を広く伝えていきたいと考えています。

中村 新しいチャレンジなので、もちろん大変なことも多いですが、私自身はむしろ楽しんで取り組んでいます。これまでに手がけてきた幹部研修の仕事では、「5年後、10年後にはこうなっているはず」という理想に向けてさまざまな施策を打っても、なかなか思うような変化につながらなかったこともたくさんありました。その理由を掘り下げるうちに、「『なぜパナソニックで経営者を目指すのか』という思いや志といった何かが、自分の中に育まれていないのではないか」という仮説を持ちました。そこで、松下幸之助が残した経営理念に立ち返り、現場での理念の実践について模索するなかで出会ったのが、Co-Activeコーチングでした。「4つの礎」※5に触れたとき、当社の理念と深く通じるものを感じ、「これまで解けなかった問の答えが見つかるかもしれない」と心から思えたのです。以来、コーチング・ブースターズとして本格的に活動を始め、一緒に取り組む仲間も自然と増えていきました。そのため、苦労というよりも、いつも「新しい挑戦を通じたワクワク」を感じながら活動に向き合っています。

松川 松下幸之助は「人はみんなダイヤモンドの原石である」という言葉を残しているのですが、まさにそれはCTI JAPANが提唱している「NCRW」だと思っています。そもそも、自分自身がダイヤモンドの原石であることを認識できていない人も多いのではないでしょうか。コーチングを続けることで、「すべての人にポテンシャルがあること」を、社員全員に認識してもらうための手助けができるのではと考えています。

「パナソニック コーチング・ブースターズ」として、実際にコーチングに取り組んでみて、いかがですか? 現時点で感じている効果があればお聞かせください。

中村 コーチングを選んだことに間違いはなかったと感じています。私はパナソニックの経営理念を伝える役割(伝道師)も長く努めていますが、たとえば5時間の研修を受けてもらっても、それだけでは受講者がすぐに実践できるようになるとは限りません。一方、コーチングでは3か月間にたった5回のセッションを行うだけで、本人自身の内面に大きなインパクトと変化が現れます。この変化とは、「その人自身が持っている強みについて再発見すること」であり、それが自信となり、自分らしい一歩を踏み出せるようになると感じています。コーチングを受けながら、経営理念や自分の仕事について考えることには、大きな効果があると実感しています。

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「組織・人材開発センターだからこそできるコーチングの実施」が次なる目標

最後に、今後の展望やウエイクアップに期待することをお聞かせください。

戒能 今後は「組織開発×コーチング」や「経営理念×コーチング」「モノづくり×コーチング」など、組織・人材開発センターだからこそ提供できる組み合わせを考えていきたいです。最近はAIコーチングや社外コーチングサービスなども数多く存在していますが、「我々だからこそ取り組めること」「パナソニック コーチング・ブースターズならではの価値」を追求していけば、外部のコーチングとは差別化された存在になれるのではないでしょうか。お陰さまで、社内コーチの人数も増え、さらなるコーチのレベルアップを目指しているので、これまでの実践で蓄積してきたノウハウを活かして「コーチング実践道場」を開くなど、もう少し実践的なレクチャーを実施したいと検討中です。ウエイクアップさんには、それらについて、手を貸していただけたら嬉しいです。

松川 私は「現場×コーチング」を実施することが良いのではと考えています。わざわざ外部のコーチングサービスを利用して会議室でコーチングを実施するのではなく、ものづくりの現場に自然にコーチがいるようなイメージです。「この活動に参加しているメンバーには、現場に寄り添える人材が揃っているのではないか」と考えているので、これからも、機械にはできないサポートを続けていきたいですね。

中村 これまでの経験から「人はどんな時でも“明日への希望”さえあれば、幸せに生きていけるはず」と考えています。コーチングはそんな、本人にとっての“明日への希望”を見つけるものだと捉えています。世の中にコーチングを広げることは、「幸せに生きていける人を増やす」ことに直結するのではないでしょうか。そんな取り組みをすすめていくためにも、ぜひこれからも、引き続きご連携をよろしくお願いします。

「パナソニック コーチング・ブースターズ」の存在は、さまざまな組織の方に勇気を与えているのではと感じています。今後も活動に伴走させていただくことを楽しみにしています。本日はありがとうございました!

※1 ウエイクアップ・アワード:ウエイクアップのミッション「意識の進化を呼び覚まし、人やシステムが本来持っている可能性が拓かれた幸せな今と未来を創ります」を具現化する活動に取り組まれた個人、もしくは組織に敬意を表し、それを広く周知するための賞。https://award.wakeup-group.com/

※2 Co-Active®:1992年に米国で設立され「コーチングの本流」としての地位を築いているCTI(Co-Active Training Institute)が提唱している「Co-Activeコーチング」の基本となっている思想。Co=「どうあるか(Being)」とActive=「何をするか(Doing)」の2つの視点を尊重し、意識と行動のシナジーから変化を促進していきます。

※3 NCRW:People are Naturally Creative, Resourceful and Whole.(人はもともと創造力と才知にあふれ、欠けるところのない存在である。)
CTIが提唱している「Co-Activeコーチング」の根底にある「4つの礎」という考え方のうちの一つ。

※4 CTI JAPAN:国際コーチング連盟(ICF)に世界で初めて認定されたプログラム(Level2)を提供しているコーチングスクール。株式会社ウエイクアップの事業サービスの一つ。https://www.thecoaches.co.jp/

※5 4つの礎:CTI(Co-Active Training Institute)が提唱するCo-Activeの思想の根底にある4つの考え方。1. 人はもともと創造力と才知にあふれ、欠けるところのない存在である/ People are Naturally Creative, Resourceful and Whole. (NCRW)2. 今この瞬間から創る / Dance in this moment. 3. その人すべてに焦点を当てる / Focus on the whole person. 4. 本質的な変化を呼び起こす / Evoke transformation. Co-ActiveコーチングはこのCo-Activeモデルに基づいています。

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