パナソニック オペレーショナルエクセレンス株式会社 様
現場に根づく1on1文化。パナソニックグループとウエイクアップの“対話から始まる組織変革”
WAKE UP Solutions:
パナソニック オペレーショナルエクセレンス株式会社 様
- ※企業情報はパナソニックグループとして
- 業界
- 電気機器、総合電機
- 売上規模
- 8兆4,582億円(2025年3月末)
- 従業員規模
- 207,548名(2025年3月末)
- 主要事業内容
- 家電や住宅設備をはじめ、製造・物流現場の機器やシステム、モビリティ・社会インフラを支える電池や電子部品など
お話を伺った方
※ 所属、役職は取材当時のものです。
- エンプロイーサクセスセンター 人事ソリューション企画室
- 西峰有紀子 様
- エンプロイーサクセスセンター 人事ソリューション企画室
- 池条みちる 様
パナソニックグループでは、2019年から「A Better Dialogue」という名称のもと、上司と部下の対話(1on1)を通じた組織文化の変革に取り組んできました。その推進役を担うのが、社内に育成されたABDコーチたち。彼らは、対話の質と量を高める文化を社内で広げるため、日々現場と向き合っています。
本記事では、このABDの取り組みからいかにしてカルチャー変革を育んできたのかを、ご担当者の西峰さんと池条さん(以下、文中敬称略)に伺いました。
この記事の目次
なぜ「対話」が必要だったのか?──変革の起点にあった課題意識
御社では現場での対話から組織を変えていく「A Better Dialogue(以下ABD)」という取り組みをされていますね。まずはこの取り組みを始めたきっかけを教えてください。
西峰 私たちがABDという取り組みを始めた背景には、従来の人事制度や評価のあり方に対する強い課題意識がありました。これまでの仕組みでは、期初・期中・期末の年3回、上司と部下が目標設定やキャリアに関する「面談」を行い、その面談の中で目標達成状況や評価について話し合っていました。しかし、環境の変化が激しく、個々人の自律的な判断や行動がより重要になる中で、「社員一人ひとりが自ら考え、動き、周囲とつながりながら成果を生み出す」文化への転換が求められていたのです。そのカギとなるのが、組織の最小単位である上司と部下の間で交わされる「対話」だと私たちは考えました。ただしそれは、表面的な会話や雑談ではなく、お互いの価値観や想い、目的を理解し合うような本質的な対話です。そのためには、会社としても制度面・スキル面の両面からしっかりサポートしなければならないと考えました。
施策検討時は、どのような未来(理想像)を描いていたのでしょうか?
池条 ABDを通して目指していたのは、単に「1on1を実施している」状態ではなく、「対話の質と量を向上させることで、互いに成長できる文化」が根づいた組織をつくることです。特に私たちが大切にしていたのは、「上司が部下の話を聴き、想いを引き出し、伴走する」スタイルが全社に広がること。それによって、社員一人ひとりが自分の仕事に対するオーナーシップを高め、自らの意思でチャレンジできるような土壌を整えたいと思っていました。 また、現場のマネジャーが「部下との対話」を通じて自身のリーダーシップを再定義していくプロセスも、私たちの大切な狙いの一つでした。
そのような状況で、なぜウエイクアップと一緒に取り組むことにされたのですか?
西峰 ABDを本質的に根づかせていくためには、単なるテクニックの提供ではなく、「人との関わり方」そのものを見つめ直すような深い支援が必要だと感じていました。そんな中で出会ったのが、ウエイクアップが提供するCo-Active®コーチング※1です。特に「人はもともと創造力と才知にあふれ、欠けるところのない存在である」という前提に私たちは共感しました。ABDが目指す対話のスタイルと、Co-Activeの考え方の親和性がとても高かったのです。ABDの浸透・定着に向けて、各職場の人事メンバーにCTI※2のコースを受講してもらい、ABDコーチとして活動してもらっています。各職場にあったCo-Activeな浸透施策を考え実行することで、共通の対話スキルと言語が生まれ、現場での実践にも再現性が出てきたことは大きな成果でした。
ABDコーチと現場で育てた1on1文化──制度だけでなく“浸透と定着”へ
実際には、どのような施策を行ってきたのでしょうか?
西峰 ABDの取り組みでは、まず「1on1の制度導入」に加えて、制度の背景や意図を現場が理解できるような丁寧なコミュニケーションを大切にしました。全国の事業所を訪問し、人事やマネジャーを対象に説明会を実施。「なぜいま制度を変えるのか」「1on1は何のために行うのか」を繰り返し伝えました。また、CTIのトレーニングを受けたABDコーチを各社内カンパニーから選抜・育成。それぞれのコーチが現場に根差しながら、自組織に合った1on1支援コンテンツを開発・実践し、社内ポータルを通じて全社に展開しています。 加えて、「1on1相談窓口」という形で、実際に1on1に関して悩みを抱える社員がABDコーチと個別に話ができる仕組みもつくり、対話を“体感”できる場もあります。こうした地道な取り組みの積み重ねが、確実に組織文化に変化をもたらしてきていると感じます。
変化は確かに生まれている──成果とこれからへの期待
これまで経年で取り組まれた成果や変化について教えてください。
池条 まず、年2回実施している1on1ミーティング実施時の約5万名に及ぶ社内アンケート結果では、満足度や対話の充実感に対する肯定的な声が年々増加しています。また、ABDコーチが主体となって開催していた研修も、今では現場の人事が自ら開催できるようになり、「現場主導で学びを育てていく体制」が芽吹きつつあると感じています。もちろん、「やらされ感で実施している」「一回やってみたものの、なかなかうまくできない」という声も依然としてありますが、そうした状況にも根気強く向き合い、「会社を変えたい」という強い想いを、5年以上にわたって手を替え品を替え発信し続けてきたことが、少しずつ仲間や共感者を増やす原動力になっています。
これまでの取り組みの中で、特に難しかった点や工夫された点があれば教えていただけますか?
西峰 最も難しかったのは、「対話」という目に見えにくい活動の価値をどう伝えるか、ということでした。「数字で示せない」「成果が見えづらい」からこそ、どうしても現場に伝わりにくいという課題があります。だからこそ、先述のABDコーチが現場に寄り添い、パナソニックが目指す対話の「型」を実際に体現してみせることを大切にしました。「私たちが目指す1on1って、こういうことなんだ」と実感してもらうことが、言葉以上に伝わるのだと気づいたのです。また、ABDコーチ同士で定期的に情報共有し、支援の知恵や工夫を持ち寄ることで、互いに支え合いながら進めてきました。
今後の展望と、ウエイクアップへの期待をお聞かせください。
池条 ABDの取り組みは、まだまだ道の途中です。すぐに結果が出るものではないからこそ、「焦らず、止まらず、初心を忘れずに」を合言葉に、愚直にやり続けることの価値を信じています。今後は、さらにABDコーチの層を厚くしていくと同時に、マネジャーや若手社員にも対話のスキルと意識を広げていきたいと考えています。ウエイクアップには、これまでと同様に、「本質的な変化に寄り添う存在」として伴走いただきながら、対話を軸とした人と組織の可能性を、さらに広げていくパートナーであってほしいと願っています。
ありがとうございました。「対話」は、ただの会話ではなく、組織文化をつくり、変化を育てていく力を持っています。パナソニックグループ様が進めてこられたABDの取り組みは、そのことを力強く証明しています。ウエイクアップはこれからも対話の可能性を信じ、皆様のパートナーとしてともに挑戦してまいります。
※1 Co-Active®コーチング:世界で初めて国際コーチング連盟(ICF)に認定され、世界各国で行われている実践型コーチ・トレーニング・プログラム。Co=「どうあるか(Being)」とActive=「何をするか(Doing)」の2つの視点を尊重し、意識と行動のシナジーから変化を促進していくことを特徴としたコーチングメソッド。
※2 CTI(CTI JAPAN):国際コーチング連盟(ICF)に世界で初めて認定されたプログラム(Level2)を提供しているコーチングスクール。株式会社ウエイクアップの事業サービスの一つ。https://www.thecoaches.co.jp/




