株式会社商船三井 様
- 業界
- 海運
- 売上規模
- 1兆8,250億円(2026年3月期)
- 従業員規模
- 10,500名(2025年3月末)
- 主要事業内容
- ドライバルク事業、エネルギー事業、ケミカルロジスティクス事業、 製品輸送事業、ウェルビーイングライフ事業、関連事業他
お話を伺った方
※ 所属、役職は取材当時のものです。
- 秘書・総務部 秘書チーム チームマネージャー
- 大加瀬裕美 様
- チーフ・ストラテジー・オフィサー補佐
- 二宮浩一郎 様
- チーフ・サステナビリティ・オフィサー、安全運航本部副本部⾧
- 引間透 様
海運業界のグローバルリーダーとして変革を続ける株式会社商船三井。VUCA(※1)やBANI(※2)と呼ばれるような事業環境の複雑さが一層増す中、同社では役員層の若返りが進み、従来の経験則が通用しない不確実な課題に直面するリーダーが増えています。新型コロナ禍真っ只中の2020年度から導入された、新任の執行役員を対象としたウエイクアップのエグゼクティブ・コーチング。コーチングがいかにして経営層の個の軸を確立し、組織の共創を生み出しているのか。事務局の大加瀬様、そしてコーチングを受けられた執行役員の二宮様と引間様にお話を伺いました。
この記事の目次
導入の背景:執行役員としての「視座」をいかに構築するか
はじめに経営層にコーチングを採用したのはいつ頃でしょうか。
大加瀬 弊社では2017年から執行役員の皆さまにコーチングを受けてもらっています。当時は、事業部門ごとの横の連携が不十分で、役員から部室長への権限委譲も不足していました。また、自発的な議論が十分でなく、イノベーションや新しいアイデアを創出する機会が少ないという課題感から、コーチングを開始したと聞いております。私自身も、どの役員からも権限移譲は課題であると伺っていました。役員になり立場が大きく変わるため、意識を変えるのが非常に難しいのです。
それが、「新任役員層」にターゲットを絞っている理由でもあるのですね。
大加瀬 その通りです。最大の目的は、部長から執行役員への明確な「マインドチェンジ」です。当時の橋本社長(現会長)は「部長は二人いりません」と公言していました。役員には部長の延長ではない、全く異なる視座が求められていますが、辞令が出たからといってすぐに意識が切り替わるわけではありません。新任役員が「どの立場で組織を動かすべきか」を内省し、自らのアイデンティティを軸としたリーダーシップを確立するための専門的なサポートが必要だと判断しました。
ウエイクアップに期待したのは、高度なアセスメント対応と「個と組織」へのアプローチ
数ある選択肢の中で、なぜウエイクアップを選ばれたのでしょうか。
大加瀬 一つ目の理由は、私たちが重視していた「360度アセスメント」を極めて高いレベルで提供できるコーチ陣が揃っていたことです。2020年当時、経営層向けのアセスメントに基づき、的確なフィードバックとコーチングを両立できるパートナーを求めていました。 二つ目として、単なる「個」のセッションに留まらない設計も魅力的でした。1対1のエグゼクティブ・コーチングに加えて、コーチングプログラムのキックオフやコーチングを受けてみての体験共有会など、新任役員が「同期」として集まる、年間で計4回のチームセッションもご提案いただきました。「個の深化」のみにとどまらず、「組織の連携」「組織へのインパクト」を同時に加速させるプログラムデザインは、ウエイクアップならではの魅力だと感じています。 そして実際に、コーチングを受けることに対しての受容性は人それぞれです。「どのようにコーチを活用しているか」「どんなことを相談しているか」などを、同じ体験をしている者同士で正直に話せる場があることは、新任役員の皆さんが主体的にコーチングという機会を活用することに繋がっています。
コーチングプログラムの効果:研ぎ澄まされる感性と「同期」の絆
それでは、役員に登用されてからエグゼクティブ・コーチングを受けられた引間様と二宮様にも伺います。実際にコーチングを継続的に受けることで、具体的にどのような変化を実感されましたか。
引間 私は以前、別の研修でコーチングの良さを知っていたため、受けることをとても楽しみにしていました。そんな中でも今回はコーチングを「学ぶ」立場ではなく、コーチングをクライアントとして「受ける」立場として経験して新鮮だったのが、身体知性を活用したアプローチです。立ち位置を変えてみたり、コーチと肩を組んで歩くこともしました。普段はデスクで頭(左脳)ばかり使ってしまうものですから、それをコーチの方が感じ取ってくださっていたのですね。敢えて右脳を刺激していただくことで、論理的に考えるだけではなく、言語化されていないものを感じ取る「感性」を呼び覚ましていただいた経験でした。そのおかげで、仕事の中で多くの方々と関わる中で、微細な変化を拾う「感応度」が上がった実感があります。日々のコミュニケーションはもちろん、自身のリーダーシップをどのように表現するかといったところにも活きています。
二宮 コーチと会話していると、自身の価値観やリーダーシップの根幹のところにたどり着きます。しばらくしてコーチングが終わり日常に戻ると、また怒涛の日々でその根っこが見えなくなってくるものですが、「ちょっと待てよ、これはコーチと話したぞ」と立ち戻れるところが明確になりました。まさに自分のリーダーシップの軸を立てるといったことが起きていました。 社長とのアラインメントの場(コーチングセッションを開始する前に、コーチとクライアントご本人、そしてその上司の三者でコーチングの目的や期待値をすり合わせ、合意する場)も非常に良かったです。私自身、実は役員としての担当がこれまでとは異分野の経営企画部門でしたので、当時は「本当にこの方針でいいのか」と迷いながら走り出していました。アラインメントの場にコーチに介在していただくことで「そもそもなぜ私が経営企画担当役員に選ばれたのか」という本質的な期待値を社長と直接握ることができ、迷いが晴れました。社長と二人だけの場であれば、自分も「失礼のないように」と意識してしまってそこまでオープンなお話はできなかったでしょう。その結果、経験豊富な部下に対しても、必要な時に「ここは譲れない」と言い切る勇気が持てるようになりました。
大加瀬 事務局として嬉しいのは、役員同士に「共通言語」が生まれたことです。部屋が隣同士の役員が、自然と「あれどうだった?」と話しながら疑似コーチングのような対話をしていたのには驚きました。私たち事務局から見ていても、孤独になりがちな役員という立場において、プロのコーチや同期と「伴走」している安心感は、組織のパフォーマンスを支える、非常に大きな要因になっています。
継続することで生まれた経営の変化
既にほぼ10年もエグゼクティブ・コーチングのプログラムが続いていて、組織に根付いていることによる効果も伺ってみたいです。
大加瀬 正直なところ、社長は当初はコーチングに対して懐疑的だったのです。ただ周りに前向きな者が多く、「みんなが良いと言うのなら」というスタンスでした。ただ、毎年、新任役員向けのコーチングプログラムのキックオフで社長としての思いを話してもらう中、以前よりもご自身の思いをかみ砕いて相手に伝わるようにお話しいただけるようになってきました。もちろん、何を話すかはご自身で準備されています。
引間 私も社長が話してくれたことはよく覚えていますよ。ご自身のリーダー観を赤裸々にお話ししてくださっていました。「リーダーは、好かれたいという気持ちを捨てる必要がある。本当は人から好かれたいのが人情だけど、時としてそこから外れ厳しい決断をしなければいけない場面もある」といった社長の哲学は、しっかりとメモして私のノートにまだ残っています。
二宮 役員を登用するときにも、自分に足りないものを持っている人を敢えて登用すると言っていましたね。最初は違和感を持つけれど、秀でているところに目を向けることも大切だ、と。
大加瀬 このように、弊社では社長がカリスマ的な存在であるからこそ、他の役員と少し距離感があったのですが、それが縮まり理解が深まり、経営哲学も浸透し、経営陣としての一体感がかなり醸成されたと感じています。
未来への継承:社長の哲学と次世代リーダーの共創
最後に、今後の展望と導入を検討されている方へのメッセージをお願いします。
二宮 役員の若返りを図る組織にとって、コーチングは単なる研修ではなく、経営の「安全装置」であり「加速装置」です。自分の根っこに立ち戻り、意思決定の軸を固めるために、これ以上の投資はないと思います。
引間 私が担当しているサステナビリティのような「正解のない問い」に取り組むリーダーは、一人で抱え込まず「みんなで悩む」スタンスへの転換が必要です。コーチングはその柔軟性を与えてくれます。
大加瀬 社長も今ではこの場を「次世代へフィロソフィーを継承する場」として信頼してくださっています。2026年度からは社長とのアラインメントをさらに強化し、より盤石な体制で共創するリーダー育成を推進していく予定です。
本対談を通じて改めて浮き彫りになったのは、リーダーが「孤独」を感じやすい執行役員への“脱皮”の過程において、外部のプロフェッショナルによる伴走がいかに不可欠であるかという点です。特に、新任役員の「視座」確立を促す「社長との本質的な期待値のアラインメント」、論理的な思考が得意なリーダーの「感性(身体知性)」を呼び覚ますアプローチ、そして「同期」という共通言語による横の連携強化は、まさしく「個の深化」と「組織の共創」を同時に実現しました。
大加瀬様、引間様、二宮様の赤裸々な体験談が、これから不確実な時代を勝ち抜こうとするすべての企業の経営層と人事・経営企画部門の皆様にとって、示唆に富むメッセージとなることを願っています。
※1、※2:いずれも現代の事業環境を表す略語。
VUCA=「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguous(曖昧性)」の頭文字をとった言葉。
BANI=「Brittle(脆い)」「Anxious(不安な)」「Non-linear(非線形の)」「Incomprehensive(不可解な)」の頭文字をとった言葉。VUCA以上に人の内面への影響が大きい現代の事業環境を表現する言葉。
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