三井化学株式会社 様

リーダーの自己開示が創り出す、VUCA 時代の『家族的』組織運営

リーダーの自己開示が創り出す、VUCA 時代の『家族的』組織運営
三井化学株式会社 様

三井化学株式会社 様

業界
化学
売上規模(連結)
1兆8,092億円(2025年3月期)
従業員規模(連結)
19,861名(2024年3月末)
主要事業内容
ライフ&ヘルスケア・ソリューション、モビリティソリューション、ICT ソリューション、ベーシック&グリーン・マテリアルズ

お話を伺った方々
※ 所属、役職は取材当時のものです。

ベーシック&グリーン・マテリアルズ事業本部 ポリウレタン事業部長
橋上雅彦 様

今回お話を伺ったのは、三井化学株式会社 ベーシック&グリーン・マテリアルズ事業本部 ポリウレタン事業部長の橋上雅彦さんです。合弁会社の経営改善や新組織の運営に携わりながら、コーチングを活用してメンバーとのコミュニケーションを大きく変革してきた貴重な体験について、本プロジェクトにコーチとしても携わった、ウエイクアップ取締役 CXO(Chief Transformation Officer)の小西勝巳がお話を伺いました。

※ 本記事は株式会社ウエイクアップ主催で行われた対談形式の講演会内容を事例記事として編集したものです。

この記事の目次

利益改善と組織改革の両立に壁:「このままではダメだ」と気づいた瞬間

小西 まずは、合弁会社時代のお話をお聞かせください。

橋上 当時は損益が悪く、組織の雰囲気もかなり沈滞していました。私は事業トップとして派遣されたのですが、正直なところ、日々の業務を回すだけでも手一杯で、幹部たちとも「このままではいけないが、具体的にどう動くべきか」という手がかりがつかめずにいました。ちょうどその頃、人事部門から「コーチングを導入してみてはどうか」という提案があったのですが、「忙しい中で研修をやる余裕なんてない」という抵抗があったのも事実です。ただ、利益改善と組織改革を同時に進めるには、私たち自身の考え方やコミュニケーションのあり方を根本的に見直す必要があるとも感じていました。

システムコーチング®※ 1とエグゼクティブ・コーチングの導入

小西 大変な状況の中、システムコーチングとエグゼクティブ・コーチングが始まったのですね。最初の頃はどのように取り組まれたのでしょうか?

橋上 最初に導入したのが「システムコーチング」でした。幹部4名で一緒に、チーム全体のコミュニケーションを見直す場を設けたのですが、当初は「忙しいのに本当に役に立つのか」という疑いが強かったのも正直なところです。コーチの小西さんから体を使った自己表現ワークを提案されたときは、「また変わった研修が来たぞ」と思ったほどでした。ですが、そのワークを通じて、無意識のうちに自分が抱えていた「先頭に立ってなんとかしなければ」という焦りや、周囲の思いを十分に聞けていない姿勢が体の動きに表れていると気がつきました。これは組織や自分を客観視する大きな転機になったと思います。さらに同時期に、「エグゼクティブ・コーチング」を個別に並行して受け始めました。私の担当コーチ・植田さんとのセッションでは、最初の頃は弱点や悩みをコーチに語ることに抵抗がありました。でも、やがて「リーダーが本音を言わなければ、メンバーも本音で応えられない」という考えに至り、取り組み方が一変しました。最初はやらされている感が強かったのですが、本腰を入れて向き合うようになると、意外なくらい早く周囲との対話が深まった気がします。

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植田裕子コーチ(左)、橋上雅彦さん(中央)、小西勝巳(右)

本音をさらけ出す「自己開示」がもたらした変化とは?

「観察」と「承認」:組織の空気を変える 2 つのキーワード

小西 チーム向けと個人向けのコーチングを同時に走らせることで、具体的にどんな変化が生まれたのでしょうか?

橋上 私が特に大事だと感じたのは「自己開示」とセットで行う「観察」と「承認」です。まず「自己開示」とは、リーダーが自分の弱みや悩み、あるいは「どこで助けがほしいのか」をオープンにすること。最初は「リーダーの不安をさらけ出したら、かえってメンバーを混乱させるのではないか」という不安もありました。 しかし実際には、メンバーから「上司が何を考えているのか知りたかった」と安心感を持ってもらえました。そこから、私自身も意識してメンバーを「観察」するようになり、家族のように「困っていないか」「得意なことは何か」という視点で接することが増えたのです。 そして良い点を見つけたら、言葉やメールでしっかり「承認」する。こうした積み重ねを続けるうちに、もともと沈んでいた組織の雰囲気が大きく変わり始めました。ちょっとしたやりとりでも「自分は見てもらえている」とわかるだけで、メンバーのモチベーションが高まっていくのを感じましたね。 さらに私自身驚いたのは、「観察」と「承認」を行うことで、逆に細かい指示をする必要性が激減したことです。「観察」と「承認」はメンバーへの信頼感につながり、「信頼するから任せる」「任せるから人が育つ」「人が育つから細かい指示は不要になり、リーダーとしての仕事:大きな方向性やビジョン、目標を繰り返し語りメンバーと共有する機会が増える」という好循環が生まれている気がします。

反対意見を歓迎する「家族的コミュニケーション」の意義

小西 「家族的組織運営」という言葉が印象的ですが、具体的にはどんな文化を指しているのでしょうか?

橋上 家族的と聞くと、“なあなあ” で甘い雰囲気を想像されがちですが、実際には逆で、むしろ遠慮せずに反対意見や厳しい指摘をぶつけ合える環境こそが大切です。たとえば私自身、言い方がストレートすぎる面があって、ときにはメンバーから「そこはもう少し配慮してください」とか「そんな言い方では伝わりません」とはっきり言われることもあります。 でも、家族なら「厳しいことを言うのは相手のことを思ってこそ」という理解がありますよね。お互いにそこが通じ合うと、本音でぶつかることを怖がらなくなる。そうすると、新しいアイデアを試そうとか、業務改善のために遠慮なく意見を交わそうという雰囲気が広がります。 結果的に、他の事業部長からも「橋上さんのところには階層を問わず人が話しに来るね」と言われるようになり、加えて私の言葉を現場にわかりやすく翻訳をしてくれるメンバーが現れるなど、コミュニケーションの質がぐんと高まりました。

驚異のエンゲージメント向上が示す変革の成果

小西 メンバーが自己開示しやすくなり、反対意見も受け入れられるようになると、成果の指標にも変化は見られましたか?

橋上 一番わかりやすいのは、エンゲージメント調査の結果です。かつては全社で下位だったスコアが、今では 1 位や 2 位を争うほどに跳ね上がりました。私たちの場合は下から 3 番目だったのが、3~ 4 年の間に上位 5 位以内に入るようになったのです。 そこまで一気に上昇できたのは、「自分の意見を言っても大丈夫だ」という雰囲気ができ、かつそれが実際に業績面の向上にも反映されたことで、組織全体にポジティブなサイクルが生まれたからだと思います。 数値という形で目に見えると、メンバー自身が「変化した」と実感しやすくなるのです。そして、より一層の意欲を引き出すきっかけになりますよね。

「自走する組織」を目指してさらなる挑戦を続ける

リーダーにもコーチングは必要か?「自分はいいから」の先にあるもの

小西 「自分はいいから」とコーチングを避けてしまう幹部社員も多い中、やはりリーダーにもコーチングは必要だと考えますか?

橋上 はい、私自身、最初は「自分より若いメンバーにコーチングの機会を与えた方が良いのでは」と思っていました。でも、いざ自分が変わることでメンバーの姿勢や会社の業績が変わるのを目の当たりにすると、「トップこそが率先してやる意義は大きい」と痛感しました。 とはいえ、いきなり大掛かりに取り組むのは難しいかもしれません。そういうときは小さな範囲や短い期間で試してみて、効果を自分たちの目で確かめるといいと思います。とにかくリーダーが「本気で変わるんだ」という姿勢を見せること。組織文化を変えるうえで、それが一番の原動力になると感じています。

自己開示をしたとき、メンバーの戸惑いはなかったか?

小西 自分の弱点や悩みをオープンにすることに、メンバーの戸惑いや抵抗はありましたか?

橋上 もちろん、最初は「どうしたのだろう、上司が急に弱気なことを言い始めた」という戸惑いもあったでしょう。でも、自己開示は一度きりではなく、普段からメンバーに声をかけ続けたり、「今日は言いすぎてしまったかもしれない」と素直に謝ったり、継続的に関わっていくうちに、メンバーからは「本当に話してもいいんだ」と感じてもらえるようになりました。 実際、メンバーが反対意見や批判を言ってくれると「そこまで考えてくれていたのか」とか「なるほど、そういう見方もあるのか」と気づかされます。 戸惑いを超えた先には、むしろ強い信頼関係が築かれる。リーダーが悩みごとを共有すると、メンバーも自分の課題を言いやすくなるので、お互いが助け合う文化が生まれるのだと思います。 また、LCP※ 2というツールの存在も大きかったです。360 度評価のアセスメント結果をエグゼクティブ・コーチングでも活用していただけたので、自分のリーダーシップがメンバーにどのような影響を与えているのかがわかり、課題が明確になりました。

コーチングの効果を感じ始めるまで、どれくらいかかったか?

小西 コーチングの導入後、変化はすぐに現れるものではない気がします。どれくらいの期間で実感されましたか?

橋上 私の場合、少なくとも 1 年は「失敗と反省の繰り返し」でした。具体的には、コーチングで「自分は指示命令型の言葉が強すぎる」と気がつくことができても、つい昔のやり方に戻ってしまう。それをメンバーに注意され、反省して謝る。そして、また気をつけて試してみる。 でも、そのうちメンバーに「今度はちょっと言い方が柔らかくなりましたね」と言われたり、周囲から「最近、雰囲気が違う」と言われたりして、少しずつ手応えが出てきました。そうして指示命令型の自分から脱却できたことで、組織が自律的に動くようになっていったのです。大きな変化を生むには時間はかかりますが、「できたりできなかったり」を根気よく続けるうちに、自分も組織も変わっていくのだと実感しました。

将来的に目指している理想の組織像は?

小西 リーダーとして、最終的にどんな組織を描いていらっしゃるのでしょうか?

橋上 私は「家族のように、困っている人を自然に助け合う組織」が理想だと思っています。誰かが「これをどうすればいいのかわからない」と悩んでいるときに、「それは自分の担当外だから」と突き放すのではなく、周りが自然にサポートに回るイメージですね。 もちろん、甘やかすだけでは成長にはつながりません。必要に応じて厳しいことも言うし、言われることもありますが、そこに「お互いを思う気持ち」があるからこそ本音でぶつかれる。リーダーは事業の向かうべきビジョンを明確に、かつシンプルに繰り返し語ってメンバーと共有し、ビジョンを実現するための目標を示す。そして具体的なアクションはメンバー個々の強みで補い合う。そのプロセスを回しながらリーダーもメンバーも「観察」と「承認」でお互いの成長を支え合う。そうした「自走型の組織」をつくり上げるために、今後もコーチングを通して出会った自分自身のリーダーシップの本質をベースに改善を続けていきたいと考えています。

※1 システムコーチング®:チームに対して行うコーチング。全員が肚落ちできる共通の目的について合意し、その実現に向けた全員で取り組む具体的な行動の実践を支援。またそのプロセスを通じてチームの関係性の質を向上させていきます。
システムコーチング®は、CRR Global Japan 合同会社の登録商標。https://crrglobaljapan.com/
※2 LCP(Leadership Circle Profile™):個人のリーダーシップの発現度を測定する360°アセスメントツール。LCPはLeadership Circle®によって開発・所有されています。https://leadershipcircle.com/ja/

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