A380
人の在り方から
リーダーの成長を加速させる
全日本空輸株式会社
人財戦略室 人事部 担当部長 神田真也 様
人財戦略室 ANA 人財大学 マネジャー 小沢ちあき 様
そこで採り入れられた研修が「コーチング」。ただ、従来の研修はやや詰め込み型で主体的な自己改革を促すには至らず、ウエイクアップに声がかかることに。ウエイクアップの研修を取り入れた経緯、与えた影響、今後への想いをご担当のお二人にお話しいただきました。
業界 | 航空 |
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売上規模 | 1,971,799百万円(2018年3月末) |
従業員規模 | 13,928名(2018年3月末) |
主要事業内容 | 国内線輸送旅客、国際線輸送、旅客および貨物郵便事業 |
※ 所属、役職は取材当時のものです。
求心力とリーダーシップを養うBeing系研修として

人財戦略室 ANA人財大学 マネジャー 小沢ちあき さん
小沢:
ANAホールディングスにはたくさんの関連会社があり、各社が独立経営を行っています。その中の17社から部長クラスを対象に2年間の研修をおこなっています。グループ各社は「青い翼のもと、同じ目標に向かって力を合わせてがんばっている」という意識はありますが、業務以外で交流することはあまりありません。各社が独自の専門性を持っていて、日々それに集中しています。多忙な中で業務ばかり考えていると、気持ちが「青い翼のもと」から離れてしまうこともあります。また、部下を育てるのも、専門性が高いばかりに「技術を教える」「指示を出してOJTで学ばせる」といった職人的なやり方に偏ってしまうことも。そういった当社の状況から、「求心力を育む」、そして「将来の幹部候補にティーチングではなくコーチングの手法を身につけて欲しい」と始めた研修です。私が担当になったのは、それが思い通り行かず、神田がウエイクアップと話をしている頃でしたね。
神田:
実はすでに別会社のコーチング研修を導入していて、ウエイクアップに依頼をしたのは、その2年間のプログラムの1年目が終了した時でした。当初依頼していた会社の研修内容は、いわばDoing系。「このタイミングでこれをやる」というタスクと目標が全体を通して決まっていて、やるべきことも多く、ステージごとに評価が出されます。参加者は日々の業務に追われながらその課題をこなすため、どうしてもやらされている・研修に参加させられているという雰囲気がでていました。人事部が目指していたゴールは、そのようにただこなしてもらうことではなくて、意欲を持って自分から成長してもらうことだったのです。このままでは思うように効果が出ないのではないかと考え、他社に相談してみようかと思ったのです。話を聞いて、当社に合わなさそうであれば採用はしないというつもりで、最初に問い合せをしたのがウエイクアップでした。
神田:
現状の研修に感じている不安を話すと、問題点やニーズとのギャップを明確に言語化して説明していただけました。またすぐに研修受講予定の社員十数人にインタビューを実施していただき、当社の傾向や課題などを分析してもらいました。とても真摯かつ親身な対応で、信頼することができました。当社の課題はマネジメントスタイルが「コト」中心であること。そのため、「自分が相対しているのはコトではなくてヒトである」ということを理解しながらスキルを身につけられる、体験学習中心の研修を行おうと決めました。ウエイクアップに依頼した決め手は、HOWの部分はもちろんのこと、打ち出されていたメッセージが当社のニーズに合致していたから。「ヒトは可能性に満ちあふれている」と明確に謳われており、「ヒトに対してどういうコミュニケーションと関係性を築くと相手の可能性を引き出せるのか」に集中されていたからです。
小沢:
私と神田はCo-Active®コーチング基礎コースを受講させていただきました。実際に体験するというのは大きかったですね。
スキルやノウハウを教えるのではなく、「気付いて変わっていこう」というBeing系の内容でした。「これは当社の社風に合っている」と感じましたね。当社の社員はやる気があって前向きな人が多い。特に研修に参加するような幹部はその傾向が顕著です。ウエイクアップのコーチングなら、その気持ちに火を点けられると実感できました。
神田:
コーチングを学ぶことで、傾聴するスキルを身につけてもらえれば、先ほど出た職人気質の人財教育方法も良い方に変化するのではという期待もありました。また、Co-Activeコーチングがモットーとしている「NCRW※(人はもともと創造力と才知にあふれ、欠けるところのない存在である)」が徹底されており、私たちが体験した講座では、コーチの方がとてもポジティブかつ民主的な雰囲気で「すべての人には可能性がある」という話をしてくれ、好印象でした。ただ不安もありました。それは、今お話しした印象や評価が、コーチ個人の人柄や姿勢によるところも大きかったからです。「実際に研修を担当する方の雰囲気が違ったらどうしよう」と。でもスタートしてすぐに、それは吹き飛びましたね。どの方もみな同様に素晴らしいコーチの方ばかり。参加者もすぐに馴染み、研修に打ち込んでいました。
※People are Naturally Creative, Resourceful, and Whole の略
ウエイクアップの智慧を結集した研修で、期待以上の効果を創出
神田:
パッケージされたプログラムをそのまま実施するのではなく、インタビューやアンケートの結果を踏まえ、また打合せを繰り返しながら、研修途中であってもプログラムをカスタマイズしていただけたのもよかったですね。まずTLC※1で360度評価2という構成がとてもよかったと思っています。360 度では自分が「いかに人の話を聞いていなかったか」が結果として出てくる。
そのあと対面でコーチングを受け、傾聴の効果を学ぶ。そこで「姿勢を変えなければ」という意識が芽生えます。そしてCo-Activeコーチング基礎コースでその手法を学び、その学んだことが散りばめられているRAで、ビジネスシーンでどう使っていくかが理解できるようになっている。それぞれの切り口はちがっても理論やストーリーが繋がっていて、「なるほど」としっかりとした腹落ち感があったと思います。この組合せはウエイクアップの智慧を結集したといえる内容で、本気で取り組んでいただけたのだなというのも嬉しかったですし、その効果は期待以上でしたね。
※1 The Leadership Circle® リーダーが周囲に与えているインパクトを自覚するための360 度アセスメントシステム
※2 Relationship Agility® 部下やプロジェクトメンバーとの関係性に対する当事者意識を高め、「組織運営力」を高めるコーチングスキルを理解・体得する実践型トレーニングプログラム
小沢:
特にRAで紹介された仕事軸と人間軸という、人との接点の持ち方、それぞれの大切さを参加者が改めて気付けたのがよかったと思います。どうしても会社内では仕事軸で人と関わってしまう。それだけではリーダーとしては不十分な点もでてきます。
切り口や考え方を変えて、人間軸で付き合うことで見えてくるものって、やっぱりありますよね。そうすることで、部下のやる気や意見を引き出せるということを自分がコーチングを通して実際に経験することで実感として分かりました。私たちは下意上達を大切にしていますし、押し進めていこうとも思っています。そのための大きな一歩になったのではと思っています。
小沢:
これは私自身の感想でもあるのですが、コーチの皆さんが私たちのことをよく知ろう、好きになろうという姿勢で臨んでもらえたのがとてもよかったですし、嬉しくもありました。その気持ちは参加者にも伝わり、修了後にとったアンケートでは全員が満足したと答えてくれました。「なるほどと目を開かされた」「話を聞く、やる気を引き出すという手法に無知である自分に気付いた」「やる気が開花された」といった意見も多かったですね。
今回の研修はとてもいい形で終わることができたと感じています。
神田:
2020 年に向けて、当社の事業は大きく拡大基調にあります。多くの社員も入って来ますし、やるべきことは今以上に増えます。掲げた大きな目標を実現するためには、上にいわれたことをやっているだけの社員ばかりではダメ。「いわれなくてもやりますよ」「いわれてないことだけど、これもやった方がいい」という、先ほど小沢が話した下意上達の動きが重要。それを引き出すためのきっかけになったと思います。もちろんコーチングだけでは解決されないことではありますが、刺激されたクリエイティブ・リーダーシップが生きてくることは確かだと思います。ただ、コーチングは遅効性。特に今回はBeing 系だったこともあり、数字で効果がすぐに見えるものではない。今後も参加者とその部門の変化を追いかけ、時には刺激して思い出させるということも大切だなと、ウエイクアップと話しています。
小沢:
「よかったね」で終わらないということも大切だと話していますね。今回は17 名の社員がコーチングに触れて変わりましたが、ANAにはまだあと約4 万人の社員が在籍しています。既に参加した社員を追いかけるだけでなく、他部門にもコーチングを経験できるチャンスを増やしたいと考えています。いろんなグループ会社、階層などに適した研修をウエイクアップと作っていけたら、もっと良い変化を全社規模で起こせるのではと期待しています。
小沢:
研修を見ていると、コーチの方の関係作りが抜群にうまい。「会社が指定した研修だから」と構えて無難にこなそうとする人は少なからずいます。その人をしっかりと本気にさせる。私個人は、Co-Active®コーチング基礎コースを受けてみて、得られた物は期待以上に大きかったです。ワークだけでなく、ライフも充実するようなきっかけが得られました。参加者もそれぞれ大きな気づきやヒントを得られたと思います。研修という概念には収まりきらない時間だったと感じています。
神田:
確かに会社の枠組みで教える以上のもの、その人の在り方まで踏み込んでもらえます。仕事をする上での目的意識を超えて、人生の過ごし方や生き様といったところまで問いかけられる。それが決して過剰ではない。より広い視野で仕事を自分事と捉えられるようになるし、また部下や同僚にとっても同じように捉えてもらうには、どうすればいいかというところまで考えられるようになる。人財としてはもちろん、人間として大きく成長するきっかけがもらえるのです。そこに気付いた人財がリーダーとなることが、企業にとってとても貴重。だからこそ一過性のブームで終わらせず、今後もANAの成長のために欠かせないものとして活用したいと思っています。新任のマネジャーやグループリーダーなど、それまでと業務の内容が大きく変わり、求められる期待役割にギャップを感じている方にはとても効果的な研修だと思います。後輩たちにもぜひすすめたいと思っています。
